短篇

キット・リード

調べ物ついでにキット・リードの短編を読む。 キット・リードと言えば、日本では『ドロシアの虎』で有名(そうか?) 「テープおたく」 Tapeworm〈『S-Fマガジン』1992年10月号〉 ハンサムで、教養もある青年。しかし、彼には、あるゆる教養・芸術番組を録画…

Mercurial

「三十三枚目のルーアン大聖堂事件」キム・スタンリー・ロビンスン〈S-Fマガジン1996年4月号掲載〉 太陽祭の日、絵画コレクターの屋敷で恐喝屋の男が殺される。たまたま居合わせた女性探偵のフレイアが調査を開始するが、手掛かりがない。そんな中、彼女はコ…

「セールス」ジュディ・バドニッツ〈『文學界』2013年7月号掲載〉 汚染物質で荒廃した未来(?)。子供のまま成長しない少女は兄夫婦と暮らしていた。家の裏には檻があり、捕まえたセールスマンたちを閉じ込めているのだ。 ぶっ飛んだ、しかし、妙に肌がざわ…

Creative Writing

「創作」エトガル・ケッセル〈『新潮』2014年3月号掲載〉 流産のショックから立ち直るために、創作教室に通い始めた妻。その作品はシュールな設定だが、妙に心を揺さぶる。夫も初級に通ってみると…… 妻が描く短篇が彼女の心情や状況を表しているんだけど、純…

Animacula: A Young Scientist’s Guide to New Creatures

「微小生物集 若き科学者のための新種生物案内」セス・フリード〈『新潮』2014年3月号掲載〉 あまりにも美しくて研究者は残らず魅了されてしまうドーソン。観察されると変化してしまうエルドリッド。一億分の四秒しか寿命のないケッセル……様々な微小生物が紹…

Reeling for the Empire

「帝国のための糸操り」カレン・ラッセル 明治時代の日本。役人の口車に乗せられ、製糸工場に連れてこられる少女たち。彼女たちは、あるお茶を飲んだことにより、体内で糸を生成するようになるのだ…… カレン・ラッセル補完ということで着手。 訳者がどれくら…

ジェラルド・カーシュ単行本未収録短篇

雑誌に載ったきり、という作品は意外に少ない。 単行本収録リストはこちら。 「ピンク象事件」 A Matter of Pink Elephants〈『EQMM』115号掲載〉 予言者とさえ言われる敏腕記者のボヘムンド・レイモンド。彼は酔えば酔うほど、凄い記事を書くと噂されるが、…

〈幻想と怪奇〉及びSF・ホラー・異色系短篇リスト(2000年〜)

・「キング・ナイン号帰還せず」……ロッド・サーリング ・「遠い星から来た兄弟」……ポール・W・フェアマン ・「谷間は静かだった」……マンリイ・ウェイド・ウェルマン ・「タイム・トラヴェル」……アラスター・グレイ ・「ひねくれ根性」……ジェラルド・カーシ…

They're Tearing Down Tim Riley's Bar

「過去からの歌声」 ロッド・サーリング〈『ミステリマガジン』601号掲載〉 以前よりも業績は悪くなり、野心あふれる部下からも追い上げられている、人生に疲れた営業部長。ずっと通っていた酒場も取り壊されることが決まっている。ある夜、その閉店した酒場…

「ピンク色の三角」エレン・クレイジャス〈『群像2012年3月号』*1掲載〉 ゲイの恋人と仲違いしたまま、学会発表に出た主人公。歴史家の彼への仲直りのプレゼントとして、骨董屋で見つけたナチスのゲイ排斥のワッペンを買うが…… 映画版『トワイライトゾーン』…

The Frontier Guards

「さきもり」H・R・ウェイクフィールド〈『S-Fマガジン』1983年11月号掲載〉 代表作ということなので読んでみた。 何人も死んでいる幽霊屋敷。中を探ってみようと、二人の男が屋敷に入るが…… 「ゴースト・ハント」のアナザーバージョンという趣の作品。 正体…

アレン・M・スティール補完

今月*1の「火星の皇帝」がよかったので、SFM掲載作を補完。 ・「ジョン・ハーパー・ウィルスン」John Harper Wilson〈『S‐Fマガジン416号』掲載〉 並行世界のアメリカ。 そこでは、軍主導で宇宙開発が行われていた。 初めて月の大地を踏んだウィルスンは、…

Evolution and Hellhole Canyon

ミステリマガジン 2012年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/11/25メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (8件) を見るジョーカーのオリジン*1も載ったことあるし、ミスマガはアメコミ者にとっても油断できない(笑) 「進化…

Reification Highway 

ついでに、唯一、邦訳の中で雑誌掲載のみ(だよね?)の作品も補完で着手。 「チャルマーの岩」グレッグ・イーガン〈『S‐Fマガジン445号』掲載〉 「チャルマーの岩」と呼ばれる小惑星を探す母子。そこには、固体化した森羅万象の根本原理があるのだ。つい…

Basileus

「バジリウス」ロバート・シルヴァーバーグ〈『日本版Omni 1983年10月号』掲載〉 核ミサイル迎撃システムのプログラマーであるカニンガムは、趣味でコンピュータ内に天使をシミュレーションしていた。彼はバジリウスというオリジナル天使を創るが、その役割…

Strike !

「ストライキ !」アイザック・アシモフ〈『日本版Omni 1983年10月号』掲載〉 各地で報告されるストライキのニュース。医者や警官がストに入り、その結果…… ニュース記事形式のショートショート。 軽妙な語り口と皮肉は他の作品同様楽しませてくれる。 黒後家…

The Night Thing Changed

「夜に変わるもの」ディナ・キャメロン〈『ミステリマガジン』2010年2月号掲載〉 アガサ賞・マカヴィティ賞受賞作 狼男と吸血鬼の兄妹。彼らは人間に紛れて暮らしていたが、世界のために真の悪を葬ることを使命としていた。ある日、未だかつてないほど邪悪な…

Newton's Gift

「ニュートンへの贈り物」ポール・J・ネイン〈『日本版Omni 1983年12月号』掲載〉 ニュートンを敬愛する学者。単純な計算から彼を救い、偉大な研究に没頭させるため、タイムマシンでミニコンピュータを渡しに行くが…… コミカルな時間SFの小品。 オチとか嫌…

Massage from Earth

「地球からのメッセージ」イアン・スチュアート〈『日本版Omni 1983年10月号』掲載〉 レコードを積んだボイジャー1号。ブラックホールを抜けて、7基にコピーされ、7つの並行世界に出現した。それらと遭遇した知的存在は…… あのレコードの意図を、異星人はち…

ドクトロウ補完

コリイ・ドクトロウの未読って1本しかないや、ということで補完。 2001年8月号『特集:カナダSFの現在』 ・「クラップハウンド」……コリイ・ドクトロウ 地球にやってきた異星人と共に、ガレージセールでお宝を掘り出す男。 しかし、あるとき掟を破り、カウ…

アダム=トロイ・カストロ補完

アダム=トロイ・カストロ補完という意味で、SFマガジンに着手。 1999年9月号『特集・世紀末ホラーの混沌』 ・「バックアップ・ファイル」……マイケル・マーシャル・スミス 事故で家族を亡くした男。 彼はバックアップしていた、幸せな家族の記録をリロードす…

Goluboe Salo

「青脂」ウラジーミル・ソローキン〈『早稲田文学増刊π』掲載〉 単行本が出るまで安心出来ないので雑誌を購入。 異様な文体模写がずっと続くのかと思いきや……ギャ〜! 面白すぎる! 『君は本当の○○を知らない!』というキャッチフレーズはこの作品のためにあ…

The Last Jerry Fagin Show

「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」ジョン・モレッシイ 〈『日本版Omni 1983年10月号』掲載〉 異星人の独占インタビュー番組の司会の座を手にした、人気芸人のジェリー・フェイギン。しかし、当の異星人はお定まりのスピーチで、全く面白いことを話して…

A Hiss of Dragon

数年前にコピーして、先日やっとファイリングした『日本版Omni』の短篇を読み始める。 「竜の鼻息」グレゴリイ・ベンフォード&マーク・レイドロー〈『日本版Omni 1983年10月号』掲載〉 重力が地球の3分の1しかなく、荒れた地表の空中都市の惑星。産業は、遺…

The Spell of War

知人に借りた同人誌で、ダーシー卿シリーズの未訳ものを読む。 「戦場の呪文」ランドル・ギャレット 1939年の大戦期に、若きダーシー中尉とオーロクレイン軍曹の戦場での出会いが描かれている。 才能ある新人将校の言葉に耳を貸さない頑固な上官という定番の…

Project Lyra

ついでに、SFマガジンに載った作品も着手。 「琴座計画」ゾラン・ジフコヴィッチ〈『S‐Fマガジン285号』掲載〉 異星人からのメッセージをついにキャッチしたアメリカの天文台。 しかし、政府はさらなるテクノロジーが手に入ると考え、それを独り占めしよう…

Goluboe Salo

「青脂」ウラジーミル・ソローキン〈『早稲田文学3号』掲載〉 近未来のロシア。極秘施設にドストエフスキーやナボコフ、トルストイらのクローンかいた。彼らが執筆すると、体に青い脂が溜まり、それを採取すると…… 全国のロマニストよ、いいニュースと悪い…

Quietus

『決算』オースン・スコット・カード 〈『日本版Omni 1983年9月号』掲載〉 仕事人間の社長。しかし、ある日、黒いものが肩にのしかかる。いつもより早く家に帰ると、モルモン教の監督から預かったという棺桶が部屋に。さらに、いないはずの子ども達の声が…… …

A Teardrop Fall

「「涙滴」墜つ」ラリイ・ニーヴン 〈『日本版Omni 1983年8月号』掲載〉 死後、人工知能として生まれ変わった男。彼の使命はテラフォーミングしている惑星を見守ること。しかし、ある日、あらゆる生命を滅ぼすことが目的の狂戦士が近づいていることに気づく…

The Singing Diamond

「歌うダイヤモンド」ロバート・L・フォワード〈『日本版Omni 1983年7月号』掲載〉 鉱物のため、小惑星を捕まえる女船乗り。新たに見つけた惑星で、彼女は歌声を聞く。それは小惑星の周りを巡る、雲のような星粒の群れの立てる音だった。それをなんとかしな…