Goluboe Salo

「青脂」ウラジーミル・ソローキン〈『早稲田文学3号』掲載〉

近未来のロシア。極秘施設にドストエフスキーナボコフトルストイらのクローンかいた。彼らが執筆すると、体に青い脂が溜まり、それを採取すると……

全国のロマニストよ、いいニュースと悪いニュースがある。
いいニュースは、新作が読めることだ。
悪いニュースは、それが長篇の3分の1を訳したものということだ。
……つづき、ちゃんと載るの?


それはさておき。長篇からの抄訳でも、十二分に変な話だから大丈夫(笑)
近未来、奇形化したクローン、多言語による会話、とパーツだけを取り出すと、サイバーパンクなんだけど、そんなはずがない。
物語は、施設の研究者が恋人に宛てた手紙とクローンたちの著作で構成されている。
手紙は中国語と造語であふれながらも、ホモセクシュアルや下品なセックスを匂わせていることがわかる。クローンたちの作品は文体模写されているようで、オリジナルは知らないんだけど、異様な改変がされていることが感じられる。個人的には、トルストイ4号の作品が一番気持ち悪い。
『ロマン』*1よりも読みやすく、『愛』*2よりも意味を汲みやすいので、ソローキン初心者にもお勧め。まぁ、一見さんが手を出すとは思えないけど(笑)

早稲田文学 3号

早稲田文学 3号