ジェラルド・カーシュ単行本未収録短篇

雑誌に載ったきり、という作品は意外に少ない。
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「ピンク象事件」 A Matter of Pink Elephants〈『EQMM』115号掲載〉

予言者とさえ言われる敏腕記者のボヘムンド・レイモンド。彼は酔えば酔うほど、凄い記事を書くと噂されるが、あるとき、小人や人魚や虎がさまよっていると口にして、社主に療養を命じられてしまうが……

「埋もれた予言」*1の続き。
前回に比べて、小咄度が高いので、こちらの方が好きかな。


「胸のうち」Something on His Mind〈『ミステリマガジン』185号掲載〉

顔を殴られ、背後を気にする男。彼は酒場に来ると、他の客にも酒をおごりはじめて……

イマイチよくわからず……
強盗かなんかしてきたってことか?


「傷痕」The Scar〈『ミステリマガジン』195号掲載〉

隣に住んでいる、年老いた、売れないコメディアン。その頭にはひどい傷跡があった。昔は大人気のコメディアンで、結婚間際まで行ったことは何度もある。そのとき、女絡みで頭に大怪我を負ったらしい。彼が語る、ことの顛末は?

カーシュの作品では一番好き。
「奇妙な味」系ではないんで、それを期待すると肩すかしを食らうかも知れないけど、小咄系としてはひじょうに好みの作品でした。
MASTERキートン』の「不死身の男」っぽいかも(これも大好き)。


「わかるかい?」Do You Follow Me?〈『ミステリマガジン』229号掲載〉

列車で席が一緒になった女性。彼女は、その日に処刑になった男の無実を彼女は明かせたはずらしいのだが、なぜ彼女はそれをしなかったのか? そして、それを聞いていた男のジョークとは?

内容、語り口、ともにカーシュらしい短篇。
聞き手の男が、ある意味狂ってるよなぁ。


「肝臓色の猫はいりませんか」 Who Wants a Liver-Coloured Cat?〈『ミステリマガジン』491号掲載〉

拾ってきた肝臓色の猫。餌も食べず、動かず、不気味なため捨てるが、なぜかまた暖炉の前にいる。いくら追い払っても変わらず……

カーシュの作品に時折現れる異形や怪異。
その正体や顛末が語られず、それ故、不安感だけが残る。