キット・リード

調べ物ついでにキット・リードの短編を読む。
キット・リードと言えば、日本では『ドロシアの虎』で有名(そうか?)


「テープおたく」 Tapeworm〈『S-Fマガジン』1992年10月号〉

ハンサムで、教養もある青年。しかし、彼には、あるゆる教養・芸術番組を録画しなくては気が済まない趣味があって……

録画して、バックアップも録画して、ラベリングして、ジャンル分けして、並べる、とジャンルは違えど、コレクターは共感できるのでは?
しかし! ラストでの彼女の暴挙に怒りを覚えるのは簡単だけど、その果ての彼の行動を理解できる人間は終わってますな。
俺、全く同じこといつも考えてんだよねw 終わってますか、そうですか。


これが面白かったので、机から左手が届く範囲内で拾い読み。


「ぶどうの木」 The Vine〈『S-Fマガジン』1974年3月号〉

代々、巨大なぶどうの木を育て続けている一家。誰が始め、どこに出荷されるのかもわからない。時代は代わり、木が地元の観光資源になった時……


「孤児収容所」 On the Orphans' Colony〈『S-Fマガジン』1976年5月号〉

とある惑星。孤児たちが収容されている施設に、馴染めない少年がいた。しかし、夜寝ようとすると、謎の生き物が彼を落ち着かせるような歌を歌い始めた。少年はそれに慰められるが、収容所からは人が減っていき……


「シャン」 Shan〈『S-Fマガジン』1979年1月号〉

やたらと物を売りつけるパーティーを開く知人。またパーティーをやると言われ警戒するが、そこにいたのは異星人。彼の故郷が住めなくなってしまい、地球に移住したいというのだが……


「身変」 Sisohpromatem〈『S-Fマガジン』1986年6月号〉

ある日目覚めると、、巨大な白い人間に姿が変わっていた……


「真実の犬」 The Dog of Truth〈『S-Fマガジン』1989年9月号〉

恋人と別れ、仕事もクビになった女性のもとに喋る犬がやってきた。その犬は真実しか口にせず、その言う通りにすると物事がうまく進んでいき……


シャーリー・ジャクソンと似てるかも。
SFというよりは、異色/奇想短篇というてい。
「ぶどうの木」とか、街の人間の嫌な感じとか、彼女の短篇集に混じっててもおかしくないような作品。


ただ、ジャクスン作品が意地悪さがにじみだしているのに比べて、キット・リードの作品では、孤独とディスコミュニケーションが繰り返し語られる。
しょせん親愛なんてものは、自分の理想像を相手に投影してるに過ぎず、それがそこにいれば、対話さえも必要ない自慰にすぎないことを突きつけられる。
むしろ、「真実の犬」を読めば、会話できる方が自分に不都合なことを言われるだけ面倒くさい。
ちょっと毛色が違う「テープおたく」さえも、題名から察せられるように孤独ではないけど、圧倒的なディスコミュニケーション


アンソロジー収録作も、実家に取りに行ってくるかなぁ。