2312

2312 太陽系動乱〈上〉 (創元SF文庫)

2312 太陽系動乱〈上〉 (創元SF文庫)

2312 太陽系動乱〈下〉 (創元SF文庫)

2312 太陽系動乱〈下〉 (創元SF文庫)

『2312─太陽系動乱─』キム・スタンリー・ロビンスン〈創元SF文庫707-08、09〉

西暦2312年。人類は太陽系各地への進出を果たしていたが、過去のしがらみを振り捨てて繁栄する惑星・衛星群と,環境破壊や人口爆発に苦しむ地球の関係をはじめ,各地で問題が噴出していた。そんななか,諸勢力の共存に尽力していた水星の大政治家アレックスが急死。彼女の孫スワンは,祖母が進めていた極秘計画に関する遺言を届けるため,木星の衛星イオに向かう。地球を訪れたのち水星に帰ってきたスワンは,水星唯一の移動都市を襲った隕石の衝突に巻きこまれる――『レッド・マーズ』の著者による,3度目のネビュラ賞を受賞した宇宙SF。
水星の移動都市を壊滅させた隕石の衝突は,偶然を装った巧妙なテロだった! 辛くも生還したスワンと土星連盟の外交官ワーラム,そして惑星間警察のジュネット警部らは,一部の量子AIが太陽系各地で見せている奇妙な動きと事件の関わりを疑う。スワンは移動都市再建のため,環境悪化を食い止めるべくミニテラフォーミング事業がおこなわれている地球を訪れるが,そこで悲惨な現状を目にして衝撃を受ける。スワンとワーラムは山積した地球の問題を一気に解決するための革命的計画を立案する。一方,正体不明のテロ犯は次の一手を進めていた!

某三部作を完結させろよ! という声はひとまず置いて、キム・スタンリー・ロビンスンの2012年度ネビュラ賞受賞作。


一昔前、SFマガジンで〈太陽系オデッセイ〉という太陽系の各惑星を舞台にした短篇の連載(でいいの?)があったんだけど、この作品はまさしく、K・S・ロビンスン版ひとり〈太陽系オデッセイ〉という趣き。


これ、ある意味、SFの踏み絵的作品かもしれない。そこがネビュラ賞っぽいけど。


つまり、テラフォーミングの種類や工法、用途、各惑星の状況が詳しく描写される一方で、物語の進み方はやたらと遅い。
上下巻のかなりの紙幅が費やされるテラフォーミングについて、が楽しめるならいいけど、そうでないとひたすら辛い読書になるよなぁ。
物語は、水星唯一の都市を襲った、ある種不可能犯罪の裏に潜むAIの行動の追跡を縦糸に、300年後の新人類のロマンスを横糸にして紡がれていく。


個人的には、このテラフォーミングはホントに面白かったし、都市を破壊した隕石衝突のアイデアも理系的奇想天外だけど、物語自体はどうかというと、これだけのページを使う話かぁ? 地球革命も結構牧歌的w
ロマンスも、長命化・性の多岐化・惑星による肉体の変化、と容姿がよく思い浮かべられない二人なので、まるでピンとこず。主人公のスワンの性格もエキセントリックがすぎるし。そのモラルの変容もSFっぽいけどね。
ちなみに、寿命は200歳近くになってるんだけど、単純に成長スピードが2倍、という感じではないよね?


上記したように物語の進みは遅々としていながら、いつの間にか終わってる、という感じ。
純粋な面白さで言ったら、イマイチ、オススメしにくい作品だなぁ。嫌いじゃないけどね。