火星ノンストップ

『火星ノンストップ』山本弘・編〈早川書房〉読了
ヴィンテージSFセレクションの第1巻。冒険編。
売れれば(笑)、続刊するとか。
恥ずかしながら、昔の(最近のもだけど)SFは全然読んだことがないんで、
こういう風なアンソロジーが出てくれるのは、非常に歓迎。


 収録作品
・『火星ノンストップ』……ジャック・ウィリアムスン
 地球全土で、異常気象が続発していた。
 それは火星から、地球の大気が奪われている為に起こっていた!
 時代遅れの飛行機に乗った冒険家のリーは、
 単身、力場チューブの中を通り、火星まで飛び立つ!
・『時の脇道』……マレイ・ラインスター
 突如、世界中でヴァイキングや恐竜が現れる。
 それは、この世界と並行して存在している無数の現在が、あちこちに現れていたのだ。
 南軍が買ったアメリカ、中国人がアメリカを発見した世界、
 ルイ王制がいまだに続くフランス……
 その現象を予見していたミノット教授は、今だ文明の発達していない世界を見つけ、
 そこの支配者になろうと目論んでいた!
・『シャンブロウ』……C・L・ムーア
 ノースウェスト・スミスは、狂ったような人々に追われている女性を助けた。
 人々は彼女をシャンブロウと呼び、こちらに渡せと迫るが……
・『わが名はジョー』……ポール・アンダースン
 木星開発のために創り出された人造生命体、ジョー。
 アングルシーはジョーに自分の精神を投射し、自分の体のように操っていた。
 しかし、最近、機械の故障が増える。
 地球からやって来たコーネリアスはその原因を調べるが……
・『野獣の地下牢』……A・E・ヴァン・ヴォクト
 あらゆる姿に変身できる、液体のようなアンドロイド。
 それは地球にやってきて、最高の数学者を見つけるのが目的だった。
 その理由は?
・『焦熱面横断』……アラン・E・ナース
 太陽系で最も暑い場所、近日点にある水星の昼側。
 バロンはその焦熱面を横断することを計画し、
 そこからの唯一の生還者、クレイニーの話を聞く。
・『ラムダ・1』……コリン・キャップ
 あらゆる場所を直線で結ぶタウ空間航行。
 しかし、一隻の船が、その異空間内で遭難してしまう。
 しかも救出方法はなく、エネルギーが切れたとき、膨大な破壊力を生み出す。
 ポーターと友人の心理学者プレヴィスは、ごくわずかな可能性があるのは、
 唯一、実験機ラムダ・1しかないことを思いつき、出発する。


何十年も昔の作品だから、素数の桁数とか水星の公転とか、
今から見れば科学知識が時代遅れの部分が多々あるけど、
それを補ってあまりあるヴィジュアルの素晴らしさ!
お気に入りは、『火星ノンストップ』『シャンブロウ』『焦熱面横断』『ラムダ・1』。
プロペラ機で火星まで飛んでいくカッコ良さ。
官能的なシャンブロウ。
硫黄が沸騰し、銅が川となる焼けた荒野。
人間の脳が処理しきれない異空間の描写。
「昔のSFなんて……」という読まず嫌いの方がいたなら、是非一読。
ヴィンテージものならではの発見や楽しみがあります。


ところで、あとがきにSF入門者向けって書いてあったけど、
この値段じゃ、SFヲタクしか買わないよ。文庫で出して欲しいよなぁ。


蛇足だけど、カバー剥がすと、アメリカのペーパーバック風でイイ感じ。