THE SHINING GIRLS

シャイニング・ガール (ハヤカワ文庫NV)

シャイニング・ガール (ハヤカワ文庫NV)

荒廃した地区のその「家」は、ただの空き家に見える。しかしそれは別の時代への通路なのだ。1931年、導かれるように「家」にたどりついた犯罪者ハーパーは、時を超えて次々と女性たちを殺し始める。奇跡的に彼の魔の手を逃れた少女カービーは、新聞社のインターンになった1992年、犯人が連続殺人鬼にちがいないとの確信から、元犯罪担当の記者とともに独自の調査を始める……。迫力のタイムトラベル・サイコサスペンス

『ZOO CITY』*1のローレン・ビュークス邦訳二作目。
期待していた『ZOO CITY』が全くはまらず、これもどうしようか悩んだんだけど、お試しでもう一冊だけ着手。


リーダビリティはよく、ドラマ化の話も進んでいるようで、確かにすんなりとドラマにコンバートできそう。


悪の『デッドゾーン*2という感じかな。
殺人鬼の目的ははっきりとは語られないけど、被害者たちはその後の世界に何らかの影響をあたえる可能性を秘めた女性たち。
殺人鬼自身には確たる理由もなく、導かれるように、彼女たちを、その後の可能性と釣り合いを取るかのように、残酷な手口で命を奪っていく。


時間を自由に行き来し、その時代に存在しないガラクタを現場に残していく殺人鬼、というのはユニークなんだけど、『ZOO CITY』同様、この作者、SFやミステリ自体が軸にあるわけではなくて、彼女自身が持っている問題意識を書くという目的が先行してるんだよね。
『ZOO CITY』は南アの現状を描くことが先行しすぎちゃって、話やアイデアがお座なりになっちゃった印象。それに対して、こちらは女性の可能性を認めない社会をテーマにしている。『ZOO CITY』に比べれば遥かにテーマと物語は合致しているし、何より面白いけど、やっぱり、彼女たちを亡き者にしようとする存在の究極的な目的はよくわからない。
殺人鬼がいたずら心でタイムパラドックス的なループを作ったり、それを閉じることを目的とする様や、それが暗示するラストはいいだけに、ガジェットにももうちょい気を配って欲しい気がする。


NVらしい作品けど、並べたいから青背で出して欲しかったなぁ。