BEHEMOTH

ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

待望の『リヴァイアサン―クジラと蒸気機関―』*1の続編! クランカー×ダーウィニスト三部作の第二部!

イギリスなど遺伝子操作を駆使する〈ダーウィニスト〉と、ドイツら機械工学を発展させた〈クランカー〉、対立するふたつの勢力はついに世界大戦に突入した。英国海軍が誇る巨大飛行獣リヴァイアサンは、オスマン帝国へ赴く。急速に親ドイツ化しつつあるトルコで、皇帝を説得する任にあたるノラ・バーロウ博士を運ぶためだ。男装の士官候補生デリンは、博士とともにドイツ軍の侵攻を目撃する。一方、亡きオーストリア大公の息子アレックはイスタンブールで逃亡を図るが――デリンとアレック、ふたりの友情が革命の鍵となるスチームパンク冒険譚、激動の第二部。

『ボーンシェイカー』*2ショックで、もうネオ・スチームパンクは楽しめないかも……という危惧は杞憂に終わりました!
やはり、物語が面白いか、ガジェットが楽しければ、ちゃんと読ませてくれるよなぁ。
おまけに、評判高い前作をしっかり受け継いでの高クオリティ。


IF歴史ものという形式は、以前のいわゆるスチームパンクを受け継いでいるけど、そこに現れるガジェットはやはりオーバーテクノロジー。しかし、そのそれぞれが楽しく、「ガジェット」はワクワクさせてナンボ、ということを思い出させてくれる。それがあれば、理屈のあるなしは気にならない。
まず、初っ端のテスラ・キャノンにやられる。個人的にはクロアチア旅行の際に、ガイドがテスラは国の誇りだ!というのを聞いちゃったから、ちょっと複雑な気分だけど(笑)
続いて、イスタンブールを闊歩する動物型メカ。ゾイド? 
どちらが傀儡なのかわからない、巨大スルタン。
一方のダーウィニストも負けてはおらず、題名にもなっている対戦艦海獣ベヒモス
記者が持つ録音ガエル。
潜水服さえも生体で、過剰さがたまらない。
ロシアの戦闘熊ってでかいの?


しかも、この作品が上手いのは、スチームパンク・ガジェットが物語と遊離せず、それらがあって初めて物語が成立、もしくは展開するように設計されている。そこがしっかりしているから、スタイルだけで終わらない、作者独自の世界が構築されている。


ストーリー自体は他愛のないと言ったら身も蓋もないけど、新たなガジェットの登場を待ち望む冒険物としてはこれくらいがいい。彼らの行動が、今後の世界の命運を握る、という感じなんだけど、正直あまり記憶に残ってない。
必死に男を装おうがかなり乙女なデリン、鈍いんだかボンクラなんだかアレック、その二人の間に現れる謎の美少女、と致死レベルの甘酢ですよ。
ヴォルガーが美味しいいところ持ってくよな。


ラストの舞台は日本。『ワイルドカード*3の悪夢が蘇る……
まぁ、ちゃんと出るだろうけど(笑)


ところで、最後にお断り入れるくらいなら、副題要らなくない? 紛らわしいよね。潜水艦出てこないし。