2012年7月号

S-Fマガジン 2012年 07月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2012年 07月号 [雑誌]

今月の特集は、「スチームパンク・レボリューション」
『ボーンシェイカー』*1を読んで「スチームパンク?」と思った人は、解説読めば、とりあえず溜飲は下がると思う(笑)
ネオ・スチームパンクはコンヴェンションありきで、アートやファッションが牽引役になっているため、小説もガジェットが揃っていれば、という様相を呈しているみたい。
今月と2010年6月号*2を読めば、ネオ・スチームパンクの流れは追えると思う


翻訳は7本。一本が短めだけど、これだけの量は嬉しい。
・「マッド・サイエンティストの娘たち」 ……シオドラ・ゴス
身寄りがなく、クラブと称してひとつの屋敷で暮らす6人の女性。
彼女たちには、唯一、父親がマッドサイエンティスト、という共通点があった……
いわゆる(って言っちゃうよね)スチームパンクなイメージはないけれど、今月号では一番お気に入り。
虚実入り乱れるのも、スチームパンクの特徴だと思うけど、この作品はそれがオタク好きしながら、かなりエレガント。


・「リラクタンス――寄せ集めの町」 ……シェリー・プリースト
小型飛行船で郵便を運ぶ青年。
途中、補給基地に立ち寄るが、どうも様子がおかしい……
『ボーンシェイカー』と同じ世界観の作品。
う〜ん、以前載った短編もそんなに印象に残らなかったんだけど、この作者、あまり趣味でないのかな。


・「銀色の雲」 ……ティム・プラット
雲から銀を密採掘する飛雲船。
そこに、巨大な軍艦が迫ってきた!
ティム・プラットはSFM登場4回目。
やっぱ、好きだなぁ。しかも、上手いよね。
短い中に、ワクワクさせるガジェット、物語の前後をイメージさせる展開、が無駄なく収められている。
短篇集出して欲しいなぁ。


・「ぜんまい仕掛けの妖精たち」 ……キャット・ランボー
婚約者は発明家だったが、彼女は褐色の肌ということもあり、社交界からは離れていた。
彼女を何とか妻に迎えたい男は、パーティーに釣れ出すが……
ヴィクトリア朝期の価値観と同時に現代らしい女性観を描くのもネオ・スチームパンクであり、その点では男尊女卑的な結婚観と女性発明家のエキセントリックさが合致している。


・「ストーカー・メモランダム」 ……ラヴィ・ティドハー
蜥蜴型種族が支配するイギリス。
劇場を経営するエイブラーム・ストーカーは、陰謀に巻き込まれることに……
非常に、キム・ニューマン的というか、アラン・ムーアっぽいというか、まぁ、大好物ですよ(笑)
同じ世界観の三部作もあるそうで、是非訳して欲しいなぁ。


・「奇跡の時代、驚異の時代」 ……アリエット・ドボダール
産業革命が起きたアステカ帝国
そこで、旧来の神が処刑されようとしていた……
イマイチ世界観が飲み込めず。
ただ、血とサビで覆われたようなイメージを与える、蒸気駆動の機械神はなかなか強烈。


・インタビュウ「シェリー・プリースト――ポルノグラフィと戦争」
インタビュウを読むと、面白そうなこと言ってるんだけどなぁ(笑)
ネオ・スチームパンクの、小説としての熟成はこれからだな、という印象は強化されました。


・インタビュウ「ゲイル・キャリガー――お行儀を忘れないために」
本人があまりスチームパンクであるということを意識していないのが面白い。
現に、あまりスチームパンクっぽくないし。
ファンが騒いでるだけなのね。


・「河を下る旅」 ……ロバート・F・ヤング
河を下る男。
途中、岸辺で女性を拾い、更に旅を続ける……
すぐにネタは割れるんだけど、こういう甘々なの、嫌いじゃないぜ(笑)
ちょっと前にもヤングが載ったけど、これはそろそろなのか!?


「タイム・スリップSFM」
今月は1990年7月号。


大森望の新SF観光局」は、おやすみ


堺三保アメリカン・ゴシップ」は、電子書籍
ハードが変わったら、というのは考えてなかったなぁ。


「SF挿絵画家の系譜」は、SF挿絵画家の起源(後篇)


「サイバーカルチャートレンド」は、おやすみ


「サはサイエンスのサ」は、進化論が理解しにくいのは(その5)
教えたがりの種族、っていうのはいいなぁ。


「センス・オブ・リアリティ」は、
金子隆一は、ガンの幹細胞
香山リカは、自殺を考える若者


「乱視読者の小説千一夜」は、クリスティーン・ブルック=ローズ。


「現代SF作家論シリーズ」第18回
長山靖生による、梶尾真治論。


「SFのある文学誌」は『白縫譚』つづき
やおいと萌えの走りが!


「パラフィクション論序説」第2回
メタフィクションとは何か?


「MAGAZINE REVIEW」は〈アナログ〉誌
"Hidden"カイル・カークランド
"The Impossibles"クリスティン・キャサリン・ラッシュ
"Project Herakles"スティーヴン・バクスター
が面白そうだった。


執筆者紹介に、予想通り『アベンジャーズ』に言及してる人がいるなぁ(笑)


来月の特集は、「日本作家特集」