THE SERIALIST

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ハリーは冴えない中年作家。シリーズもののミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末だった。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。ポケミスの新時代を担う技巧派作家の登場!アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作。

ジャンル小説」小説。
いくつものペンネームで(売れない)ジャンル小説を書いている主人公、という時点でそそられずにはいられない。その彼が初めて実名で書いた本が、「事実は小説より奇なり」な事件を扱ったもの、という体裁。
この手の作品によく見られる、ジャンル愛に溢れる表現、というものは意外なほどない。その代わりにジャンル小説の分析が行われていて、そこに、ハリーは金のために何種類ものジャンルものを手がけているが、それはけっして金のためだけでなく、書き手、読み手への想いがにじみ出ている。


物語の所々に、主人公の作品の抜粋が挿入されていて、それが面白い。いや、あまりにベタなジャンル物でまるで手に取る気にもなれないんだけど(笑)。だからこそ、読み捨てにされていることが伺えるし、一発当てようと今回の事件に巻き込まれてしまうこともわかる。それと同時に、引用された部分は適当に挿入されているだけでなく、その時のハリーの心境や状況を表しているようにも読める。個人的には『惑星ゾーグ――さまよえる愛奴船』第七章はかなり面白かったけど。


また、主人公がダメ中年にしては、彼の周りに美女が多く、中でも家庭教師の生徒にしてビジネスパートナーのクレアは印象的。完全にクロエ・モレッツに脳内変換ですよ(笑)


ちなみに、きっかけとなる連続殺人はけっこうスプラッタ。