THE COMPANY MAN
- 作者: ロバート・ジャクソン・ベネット,青木千鶴
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: 文庫
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ときは1919年。驚異の技術力を誇るマクノートン社の介入で大戦が回避された世界。空には飛空艇が飛び交い、地下路面列車が縦横無尽に走る巨大都市イヴズデンを流れる灰色の運河に、男の死体が上がった。人の「心の声」を聞くことができる保安要員のヘイズはマクノートンの組合員と見られる男の死に興味を抱く。社からも組合内部の動向を探るようにとの指令が下り……。アメリカ探偵作家クラブ賞ペイバーバック賞受賞作
組合員が奇怪な手口で次々と惨殺され、さらにはマクノートン社が政府にも黙って進めていた宇宙飛行実験の事実が明らかになると、市民の社への反感はかぎりなく高まった。ヘイズは組合運動の首謀者と目される男への接触を試みるが、地下通路での面会は巨大都市をさらなる混沌へと突き落とすことに……。ヘイズの調査は、マクノートン社の汚れた正体と超技術の源泉へと迫っていく。フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞作
冒頭は運河から死体が上がるという至って普通のミステリシーンなんだけど、そのまま読み続けると、うひょー! 楽しい〜!
人の心を読める調査員が主人公という解説を読んで、最近の作品で言うなら『地上最後の刑事』*1のように、SF的設定の上に立脚してるけど、基本は普通のミステリなのかと思いきや、これ、青背で出てもおかしくないな〜。
ただ、青背にしては話運びがミステリ過ぎ、ミステリレーベルだとしたら設定がぶっ飛び過ぎ。NVで出て正解なのかな〜。
マクノートン社によって大戦が回避された1919年。摩天楼をチューブがつなぎ、飛空艇が飛び交い、地下には列車が縦横無尽に走り、周囲の街を吸収しながら無秩序に巨大化を続ける巨大都市が舞台。
スチームパンクがセピア色なら、こちらはブルーグレイのスティールパンクと言った趣。
主人公は人の心を読めると言っても万能ではなく、ノイズとして常に声が飛び込んできて、二人きりでしばらく過ごさないと、目的の人物の感情が読めないという限定的なもの。しかし、まるで昔からの親友のように気心を通わすことができるため、それを取っ掛かりに情報を集めていく。
一方で、彼の助手が一般的な疑問を抱く目として機能し、親友の刑事が定番の捜査をするので、この三者によってミステリとしての骨格は成立している。
しかし、物語のメインである、組合運動の首謀者、謎の大量殺人の真相、マクノートン社の超技術の秘密、の後ろ二つがミステリの骨格を大きく揺るがす。
『地上最後の刑事』がSF的設定世界で普通にミステリし、『幽霊殺人』が真っ当なミステリをラストのSFでぶち壊したのなら(でも大好きw)、この作品はSF的主人公がSF的舞台でSF的真相をあくまでミステリしている。
でも、改変世界ミステリとして〈ダーシー卿〉*2や〈ファージング〉*3とはまた感触違うんだよなぁ。
繰り返しになっちゃうけど、〈ダーシー卿〉はミステリで出ても違和感ないんだけど、本作がそうだったら激しい違和感w
一言で言うなら「変」な作品。
個人的にはミエヴィルのボーダレスな作風に似てると感じた。もうちょい、道路が整備された『ペルディート・ストリート・ステーション』*4って感じw
ちなみに、刑事が回想する過去の事件はちょっとした奇想短篇風。
これが長篇2作目で、まだ4作しかないそうなので、ぜひ邦訳を!
一作目なんか、シャーリー・ジャクソン賞取ってるもんなぁ。