DOM DZIENNY, DON NOCNY
- 作者: オルガトカルチュク,小椋彩
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/10/19
- メディア: 単行本
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ポーランドとチェコの国境地帯にある小さな町、ノヴァ・ルダ。そこに移り住んだ語り手は、隣人たちとの交際を通じてその地方の来歴に触れる。しばしば形而上的な空想にふけりながら、語り手が綴る日々の覚書、回想、夢、会話、占い、その地に伝わる聖人伝、宇宙天体論、料理のレシピの数々……。豊かな五感と詩情をもって、歴史に翻弄されてきた土地の記憶を幻視する。現代ポーランド文学の旗手による傑作長編
『マタンゴ』*1以来のきのこ小説(嘘)
実際、ポーランド人はキノコ好きだそうで、秋にはキノコ狩りに行ったり、作中でもキノコの比喩やキノコ料理のレシピが突然出てくる。ベニテングダケのタルトとか(笑)
夢、現実、妄想、推測、噂、歴史、神話……とりとめのない掌編の集まりで、イマイチとらえどころがなく、なかなか読み進められなかったけど、個人的には、EX LIBRISの中では好きな一冊。
掌編が主人公の周りの空気を表しているのなら、途中に挟み込まれる主人公と関係のない短編は土地や時間を表現している。一見、それらは関係ないように思えるんだけど、緩やかにつながり、主人公の足元まで続いている。
掌編も変なんだけど、短編がマジックリアリズムほど押しが強くなく(笑)、なんとも奇妙な味。ポーランドとチェコの国境上で死んだ男を警備兵が押し付け合ったり、ドイツ人が残した村に移住してきたポーランド人が宝物を掘り出したり。それは歴史よりずっと先に土地はあったのに、それを区分けする歴史に翻弄されてきたポーランドそのもの。他にも、あらゆるものが変わってしまったと感じる男の物語や謎の若者との浮気で崩壊する夫婦など。中でも聖人伝の不思議な存在感は絶妙で、刃物師派とかホントにあるの?
主人公の隣人たちも現実から遊離したような人ばかり。
とらえどころのないのに、どっしりと土臭い作品でした。