LOS DETECTIVES SALVAJES

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈下〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈下〉 (エクス・リブリス)

『野生の探偵たち』ロベルト・ボラーニョ〈白水社EX LIBRIS〉

1975年の大晦日、二人の若い詩人アルトゥーロ・ベラーノとウリセス・リマは、1920年代に実在したとされる謎の女流詩人セサレア・ティナヘーロの足跡をたどって、メキシコ北部の砂漠に旅立つ。出発までのいきさつを物語るのは、二人が率いる前衛詩人グループに加わったある少年の日記。そしてその旅の行方を知る手がかりとなるのは、総勢五十三名に及ぶさまざまな人物へのインタビューである。彼らは一体どこへ向かい、何を目にすることになったのか?
1976年、ソノラ砂漠から戻った二人の詩人、アルトゥーロ・ペラーノとウリセス・リマは、メキシコを離れ、それぞれヨーロッパに渡る。その後、世界各地を放浪する二人の足取りは、メキシコに残ったかつての仲間から、作家、批評家、編集者、トロツキーの曾孫、ウルグアイ人の詩人、チリ人密航者、アルゼンチン人写真家、ガリシア人弁護士、女ボディビルダーオクタビオ・パスの秘書、大学教授など、実在・架空のさまざまな人物の□から伝えられる。最後に少年の日記から明らかにされる二人の逃避行の理由とは?

字がびっしりの上下各400ページ。
最近の『煙の木』*1や『火山の下』*2に比べるとリーダビリティはひじょうにいい。
日記の作者である少年の青春ものであり、謎の女流詩人の足跡を追うロードノベルであり、二人の詩人を語るフェイク・ドキュメンタリーであり、二人の逃避行の理由を巡るミステリであり、南米文学史ものであり……
物語はアルトゥーロ・ベラーノとウリセス・リマに関する様々な人物へのインタビューと、二人と一時期行動を共にした少年の日記で構成されている。
インタビューが一筋縄ではいかず、二人のことを訊いているはずなのに、いつしか答える人々の人生が語られる始末。また彼らの語る人生それぞれが破天荒で現実離れしている。ある意味、奇想短編集としても読むことができるかもしれない。個人的にはやたらと引用文を連発する弁護士と、サッカーくじを的中させる密航者のエピソードが好き。しかし、どんな人間も人生の一断面を切り取れば、読者を引きつけるエピソードになりうるという普遍的な物語とも思える。
そして、インタビューする相手によって、アルトゥーロ・ベラーノとウリセス・リマの性格は全く異なり、語り手も語られる対象も信用できない。
また、このインタビュアーの正体は誰なのか、それを読み解くのも楽しめる。ヒントになるような記述が何度か出てくるけど、どうなのかしら。
最近の交友関係のおかげで、南米作家の名前も多少は覚えたので、彼らの名前が口にされるのも楽しい。ただ、そのせいで、ますます全体の虚実が危うくなっていく。オクタビオ・パスが凄いことはよくわかった(読んだことないけど)
様々な要素が詰め込まれていて、「読書」という行為を満足させる一冊。
エクス・リブリスの中ではベスト級かなぁ。