THE DANTE CLUB

ダンテ・クラブ

ダンテ・クラブ

『ダンテ・クラブ』マシュー・パール(新潮社)読了。


19世紀、南北戦争直後のアメリカ。
詩人のロングフェローを中心として、
ホームズ、ローウェル、グリーン、フィールズの五人が集まり、
初のアメリカ版『神曲』を翻訳出版しようとする、「ダンテクラブ」という会合を開いていた。
順調に翻訳作業は進む一方、
国内文学の保護者を自認するハーヴァード大学はダンテの翻訳を妨害する。
そんな中、判事が全身を蛆に食べられながら緩慢に死ぬという殺人事件が起きる。
続いて、牧師が両足を蝋燭のように燃やされて殺される。
今だかつてない残酷で異様な殺人に警察の捜査は進まないが、
ダンテクラブは、それが『神曲』の地獄を模した殺人だと気づく。
まだアメリカでは翻訳されていない現状で、
自分たち以上にダンテに詳しい者がいるとは考えられない。。
これが明るみに出ればダンテ反対派の格好の餌食になるばかりか、
自分たちが容疑者となってしまう!
さらに、まだ殺人は続くはず。
ダンテクラブは独自の捜査に乗り出す!


全く知らなかったんだけど、「ダンテクラブ」とその活動は実在したそうだ。
そんなわけで、主人公たちも実在の文学者。
さらに、キャラクターや出来事、台詞も当時の書簡などから取っているとか。
凄い〜! と思ったら、作者はダンテ賞を獲っている研究者。どうりで(笑)


ミステリは詳しくないから、断言できないけど、仕掛けとかは、けっこう普通のミステリかな。
ただ、その情報量は濃密。
ダ・ヴィンチ・コード』よりも人に話したくなるようなトリビアは少ないけど、
ダンテと19世紀アメリカ知識は増えると思う。
そのせいか、なかなか読み終わらなかった。
恥ずかしながら、『神曲』読んだことないんだけど、読んでみたくなる。


ダンテクラブの面々がなかなか覚えられない上、あまり愛着がわかなかったんだけど、
初の黒人刑事レイが普通に主人公っぽくてお気に入り。
脳内でルイ・マシュンゴに自動変換(声も)。


ダ・ヴィンチ・コード』のおかげで歴史ミステリの翻訳が増えるかも。