ダンジョン飯(1)

オムレツによって、ドワーフがエルフを認める物語(誇張アリ)


短篇の名手、九井諒子の最新作がまさか長篇とは!


以前から、オーソドックス故に、確固たるファンタジー観、ベースがあり、その中で遊んで、オリジナリティ溢れる作品を描く漫画家さんだなぁ、と思ってたんだけど、それをさらに推し進めて現れたのが、この作品!


舞台は、普遍的ダンジョンRPG世界。ドラゴンに食べられてしまった妹が消化されてしまう前に助けに行く、というストーリーが一応あるものの、それはサイドストーリーに過ぎず、作品の真の目的は、道中で出会う魔物をいかにして美味しくいただくか!


退治した魔物を食べるゲームは少なくないけど、そのレシピがメインの作品はなかなかありますまい。
魔物料理のレシピという突飛な設定にもかかわらず、その調理方法自体は、我々がイメージしやすい形に落としこんでいる、このバランス加減がお見事。食べたこともないのに味もなんとなく納得しちゃうw
ステレオタイプなファンタジーRPG的世界だからこそ、モンスターの独特の解釈が生きてくる。これで、世界観もユニークだと、ここまで面白くならないと思うんだよね。誰もが知ってるという前提で、魔物自体の説明は最小限で済ませて、しかし、調理するにはその生態を詳しく描写していて、架空博物誌としてもよくできている。動く鎧とか、よく考えたよなぁ。ファンタジーモンスターの解釈の方向は久正人の『びっくりモンスター大図鑑』*1に近いかも。


また、ギャグ漫画としてのとぼけた風味も健在。それが魔物料理と不可分で、しっかりした構造を持っている。
四人の主人公も魅力的。どうかしてる戦士のライオスとドワーフのセンシ、冷静なシーフのチルチャック、唯一のツッコミ兼綺麗どころ兼汚れ役のエルフのマルシル、の四人のアンサンブルが楽しい。
作品では「オムレツ」の話がお気に入りだけど、料理ではローストバジリスクと干しスライムが食べたいなぁw


オススメ。