PRETTY MONSTERS

プリティ・モンスターズ

プリティ・モンスターズ

『プリティ・モンスターズ』ケリー・リンク早川書房

クレメンタイン・クリアリーは、ある夜、気が付くとパジャマのまま海に入っていて溺れかけていた。高校生のキャベル・メドウズに命を助けられたクレメンタインは、自分も高校生になってから、またしてもキャベルに命を救われる……。一方、ジガニーは、同級生の女の子四人が「試練」と呼ぶ冒険に連れ出され……。少女たちの奇妙な友情を綴ったローカス賞受賞の表題作。 新型インフルエンザのパンデミックが発生、父親に薬で眠らされたサッカー少年のドーンは、コスタリカに渡り、少女たちとサッカーをする……。哀しくも明るい破滅の風景を描く「サーファー」。 いっしょに旅しているオニオンとハルサはいとこ同士。魔法使いの召使い頭に売られることになったハルサは、魔法使いの住むパーフィルに連れて行かれる。離ればなれになった二人だったが……。傑作ファンタジイ「パーフィルの魔法使い」 川上弘美円城塔らが絶賛する、現代アメリカ女性文学の新しい潮流を代表する作家リンクの最新作品集。全10篇収録。


収録作品
・「墓違い」
・「パーフィルの魔法使い」
・「マジック・フォー・ビギナーズ」
・「妖精のハンドバッグ」
・「専門家の帽子」
・「モンスター」
・「サーファー」
・「アバルの治安官」
・「シンデレラ・ゲーム」
・「プリティ・モンスターズ」

久々のケリー・リンク三冊目。
最新作品集だけど、著者選短篇集なのか、半分既読。
しかし、ケリー・リンク作品の場合、初読よりも再読の方が楽しめる気がするんだよね。初読だと味わえないことが多い。「墓違い」が以前読んだときはイマイチだったんだけど、これ、面白くない?w


ただ、ここに収められてる作品は、リンクにしては、結構わかりやすいものが多かったなぁ。「パーフィルの魔法使い」なんて、直球の、しかし、やはり変化球のファンタジーとして、かなり面白い。
「妖精のハンドバッグ」もなかなか楽しいし、「サーファー」の終末が迫っているのかもしれないけど、少年の夢はそれとは無関係、という感じもよく分かる。
「モンスター」は最近読んだばかりだけど、やっぱ怖いなぁ。でも、モンスターがなぜか松本人志のきぐるみに脳内変換w 「おっちゃん、モンスターやねん」って感じ。


作品集全体に共通して言えることは、思春期の逃避にも、それとも本当にファンタジーが起こっているとも取れ、しかも何かが歪み、それが恐怖を伴っている。
恐怖・不快は必ず描かれていて、イニシエーションにも見えるんだよね。ただし、それを乗り越えても、いきなり物語は終わってしまい、読者は不安感を覚える。
それがリンクの味でもある。
各章の扉に描かれたイラストはショーン・タンで、これまたいい調味料となっている。