THE LAST POLICEMAN

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに……なぜ捜査をつづけるのか? そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイバーバック賞受賞作!

発見された死体が、主人公だけが自殺ではなく他殺だと考え、捜査に奔走するも、上司も同僚もことを大きくしたがらず、検査機関も妨害レベルのやる気のなさ。ただ一人真相に近づく主人公は命も狙われ……というのは、まぁ、警察ものでは珍しくないあらすじ。
しかし、この小説では、多発する自殺も、やる気のない警察も、全て理由は一つ。数カ月後に小惑星が地球に衝突し、世界が破滅するからなのだ。


ミステリとしては至極まっとう。
終末直前でも、人が事件を犯す理由は変わらないし、陰謀的な意外な事実もそう起こることではない。


SFとしては、この終末直前が見どころ。作中にも出てくるんだけど、終末の過ごし方としては『渚にて*1に次ぐんじゃないかなぁw ちなみに終末を扱った過去作の言及は何度か出てきて、主人公の愛読書は『ウォッチメン*2
恐らく、世界各地で「ヒャッハー!」な場所は無数にあると思うんだけど、この物語の舞台になる田舎町は、特に波乱もなく、ただただ倦怠感。
「捜査する」というミステリの性質上、世界の様子は人の目線で追われるため、SFよりもあきらめムードの空気は強く感じられる。
一方で、最後まで働こうとする人々が多いのも、作者の優しさというか、理想なのかな。
ただ、個人的には、捕まえる必要があるのかな? と思っちゃう方なんだなよね。この物語において、犯人はシリアルキラーではないんだし。


クソ真面目でデカイ主人公は、『血界戦線*3のクラウスさんに脳内補完w


ちなみに、『DC vs マーベル』が映画化されている模様。


これは三部作の第一部で、本国でもまだ完結してません。