Samko Tale : KNIHA O CINTORINE
- 作者: サムコターレ,Samko T´ale,木村英明
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2012/04/13
- メディア: 単行本
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いかがわしい占い師に「『墓地の書』を書きあげる」と告られ、「雨が降ったから」作家になった語り手が、社会主義体制解体前後のスロヴァキア社会とそこに暮らす人々の姿を『墓地の書』という小説に描く。
知的障害のあるサムコ・ターレが記し、ダニエラ・カピターニョヴァーがまとめたという体裁。
同じ事を何度も繰り返しながら道筋は欠落し、幼稚ゆえの意固地な考えとお馬鹿な論法で、まるでチャーリー*1の文章のようで、読んでいていたたまれなくなってくる。
しかし、純真で正直、ある意味自分は正しいことをしていると思っているのがポイント。子供の頃、慕っていた博士になんでも話してほめられた、という何度も出てくるエピソードは、一見微笑ましそうだけど、共産国家の密告にほかならないという皮肉。
また、オブラートに包まない彼の言動はスロヴァキア社会の本音そのままなんだよね。
サムコは、「俺は差別と黒人が大嫌いだ」というブラックジョークそのまんまで、しかもハンガリー人やジプシーを嫌うことを全く悪いことだと思ってないし、そもそも差別だとも思っていない。
「民主主義なんて、僕は望んでなかったのに」というのも、当時の大声で言えない代弁なのかな。
語呂合わせが多いのも特徴で、それはスロヴァキア語で説明するのではなく、各国語で笑いを取るよう工夫してくれ、と著者からお願いがあったとか。
語り口とともに、いびつな旧社会と、急激な西欧化についていけない人々を、21世紀からだからこそ概観出来る作品。
元はひとつの国で、同じ廃品を扱う主人公にもかかわらず、テイストが違う『あまりにも騒がしい孤独』*2と読み比べるのも一興。