Ostre sledovane vlaky
- 作者: ボフミル・フラバル,飯島周
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2012/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
舞台は1945年、ナチスの保護領下におかれたチェコ。若き鉄道員ミロシュは、ある失敗を苦にして自殺を図るが未遂に終わり、命をとりとめた後もなお、そのことに悩み続けている……イジー・メンツェル監督による同名映画の原作小説。
恥ずかしながら、映画*1は全く知りませんでした。
『あまりにも騒がしい孤独』*2は、ゴミから美しい本を救いだすと言いながら、主人公の認知が狂っているため、叡智と汚穢が区別できないグロテスクさがあった。
それと同じように、この作品では、主人公ミロシュのエロとナチスの圧力が表裏一体となって語られていく。ファーストキス(?)と鉄柵、初体験と空爆、自殺未遂と突きつけられた銃、そしてクライマックス。
多かれ少なかれ、国(世界)の一大事も、プライベートなことに落とし込まれて記憶されていくと思うんだよね。ただ、このミロシュも他の作品の主人公と同じように認知がずれていて、それぞれのエピソードの行動が突飛で唐突。まるで他人ごとのような物の見方に違和感を覚える。かと言って、それを嘲笑できるほど、人は清廉潔白ではなく、それは最初の方に出てくる「みんなでナチスに立ち向かっていれば……」につながる気がする。
ミロシュの祖父がナチの戦車に催眠術で立ち向かったエピソードは客観的には笑えるんだけど、本人は大真面目だし、しかも祖国を守ろうとした気持ちは嘘偽りなく、我々にも理解できる。
同じように、ミロシュにとっても、性体験は人生の一大事だけど、同じくらいナチスへのレジスタンス行為は重大だとわかってるんだよね。
初体験と爆発、そこに可笑しみと物悲しさを覚える。