AT BUDOKAN

『武道館にて。』アレステア・レナルズ〈ハルコン・SF・シリーズ2012〉



2012年のはるこんで販売されたオリジナル短篇集。
今回で3冊目。同人誌としてはパーフェクトな装丁で、今後も続けていって欲しいなぁ。


・「武道館にて。」At Bodokan
アンドロイド・メタリカを当てた、芸能マネジメント会社の経営者。
しかし、次の失敗で逃げていたところ、かつての相棒から連絡が入る。
その計画とは?
まさか、T.Rexって、ネタじゃないだろうな?(笑)
巨大メタリカは当たらんでしょう。
バカSFなんだけど、新たな種の進化と読むと、ちょっと不気味。


・「宇宙船医の助手」The Star Surgeon’s Apprentice
とある事情で、ステーションから逃げ出し、宇宙船に乗り込んだ少年。
船賃代わりに船医の助手となった。
働き始めてしばらく経ち、巨大な船で迷っていたところ美少女と出会う。
更に、その船の秘密も知ることになるが……
啓示空間シリーズではないそうなんだけど、組み込まれていても不思議はない作品。
悪くないんだけど、ガジェットが使い切れず、寸足らずな印象。


・「未来への眠り」Sleepover
不老不死技術が確立するまで冷凍睡眠に入った資産家たち。
しかし、ガントが目覚めたのは、まるで想像もしていない世界だった。
不老不死どころか、20億の人間が冷凍され、一握りの人間がその運用にあたり、しかも、それが全人口だという。
はたして、なにが?
イーガンの作品に出てきそうな時空間そのものをリソースと化した超計算機に、レナルズらしいグロテスクな怪物がどう絡むのか?
全人口が冷凍されている理由も、シンギュラリティものとしてユニーク。
この作品集では一番好き。


分厚いことで有名なレナルズだけど、個人的には内容も嫌いじゃないんで、続けて刊行されていたのが急に止まっちゃって残念。
啓示空間シリーズ*1も三部作の最後出して欲しいなぁ。