ROOM

部屋

部屋

注:ネタバレあり。

今日はジャックの5歳の誕生日。ジャックはママと部屋に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。テレビを見るのが大好きで、アニメの主人公が友だちです。でもジャックは知っています。テレビに映るモノはホントのことではないことを。自分とママと部屋だけがホントのことです―ママが外の世界があることを教えてくれるまでは。誘拐され、監禁された少女に、子供ができてしまったら…。極限状況を生き抜こうとする人間の勇気と気高さ。

帯やあらすじでネタばれしちゃってて、もうちょい上手い宣伝はなかったものかと思ったものの、今更「びっくり箱」*1的展開を伏せる価値は高くないか。
しかも、監禁生活自体がメインではなく、その後がこの作品で描きたいことなんだよね。


前半は母子の生活が綴られていく。
5歳児の一人称で読み進めにくいんだけど、そこにあるのは、彼が認識している奇妙な世界。徐々に、読者はそれが狭い部屋での監禁生活で、少年はそこから出たことがないことが見えてくる。


最近、女性が長期間監禁されてきた、というニュースが世界中で報道されている。言い方悪いけど、フィクション的にはそれを題材にしても驚きがない。また、ドラマとしても、そこからの解放がクライマックスになるのが定番だけど、その後の生活というのはフィクションにしても、ニュースにしてもあまり知らされない。
中盤、脱出の展開は非常にサスペンスフルで、緊張感は半端じゃない。しかし、そこで全てが終わるわけではなく、それからも人生は続くんだよね。


異常な世界で必死に正常を保とうとするママ。その姿は力強く、精神の均衡もとれているように見える。しかし、彼女の「正常」は「異常」の中での正常であり、やっと日常の世界に戻れても、そこでの「正常」に彼女は耐えられない。
また、それはジャックにしても同じで、むしろ彼にとっては「部屋」の方こそが元の世界。
「部屋」しか知らないジャックの立場になれば、外の世界は怖くて帰りたい気持ちは理解できる。でも、部屋に帰りたくないママを理解出来ないジャックを我々は理解出来ない。
現実の再構築と克服がこの小説のテーマ。
ママが立ち直るのと同時に、ジャックの異世界での成長譚でもある。


LEGOはやはり情操教育に良いですよ(笑)