フラナリー・オコナー全短篇(上)

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

フラナリー・オコナー全短篇(上)』フラナリー・オコナーちくま文庫お28-2〉
あまり読むつもりはなかったんだけど、周りがみんな読んでいて、寂しくなったので追っかけ。

 収録作品

  • 「善人はなかなかいない」 A Good Man Is Hard to Find
  • 「河」 The River
  • 「生きのこるために」 The Life You Save May Be Your Own
  • 「不意打ちの幸運」 A Stroke of Good Fortune
  • 聖霊のやどる宮」 A Temple of the Holy Ghost
  • 「人造黒人」 The Artificial Nigger
  • 「火の中の輪」 A Circle in the Fire
  • 「旧敵との出逢い」 A Late Encounter with the Enemy
  • 「田舎の善人」 Good Country People
  • 「強制追放者」 The Displaced Person
  • ゼラニウム」 The Geranium
  • 「床屋」 The Barber
  • 「オオヤマネコ」 Wildcat
  • 「収穫」 The Crop
  • 七面鳥」 The Turkey
  • 「列車」The Train

絶対の正義、善の物語。
悪意がなく、「善意」だけの世界。
ただし、そこはあまりにも狭量で、想像力がない。
故に、本人以外には残酷に映る。
その行動原理は狂信者のようでありながら、しかし、彼らはごく普通の人であり、読者が彼らと入れ替わったとしても同じような行動を取ってしまうかもしれない(例えば、怪我人に同情しながら、自分は無事でよかったと考えるようなエゴ)。
だから、登場人物を理解、感情移入しにくい(したくない)。
ここで、最も理解しやすいのが、聖職者やアウトサイダーたち。彼らの行動原理はけっしてぶれず、そして自由。それを前にして、上から目線の「善意」を振るう人々は折れてしまうことになる。この辺から、作者のキリスト教的精神が読めそうなんだけど、一読だけだと難しい。
なかなか感想が言いにくいんだけど、小説的に気に入ったのは、「河」「不意打ちの幸運」「田舎の善人」「強制追放者」「床屋」「収穫」あたりかな。
ハッキリ言って、読後はまるで爽やかじゃありません(笑)