DISTURBING FICTION

厭な物語 (文春文庫)

厭な物語 (文春文庫)

誰にも好かれ、真っ当に生きている自分をさしおいて彼と結婚するなんて。クレアは村の富豪の心を射止めた美女ヴィヴィアンを憎悪していた。だがある日ヴィヴィアンの不貞の証拠が……。巨匠クリスティーが女性の闇を抉る「崖っぷち」他、人間の心の恐ろしさを描いて読む者をひきつける世界の名作を厳選したアンソロジー


 収録作品
・「崖っぷち」……アガサ・クリスティー
・「すっぽん」……パトリシア・ハイスミス
・「フェリシテ」……モーリス・ルヴェル
・「ナイトオブ・ザ・ホラー・ショウ」……ジョー・R・ランズデール
・「くじ」……シャーリイ・ジャクスン
・「シーズンの始まり」……ウラジーミル・ソローキン
・「判決ある物語」……フランツ・カフカ
・「赤」……リチャード・クリスチャン・マシスン
・「言えないわけ」……ローレンス・ブロック
・「善人はそういない」……フラナリー・オコナー
・「うしろをみるな」……フレドリック・ブラウン

正直、最近の作品からも、もっと入れて欲しかったなぁ。
嫌な話といえば、当然ハイスミスやジャクスンの名は挙がるし、「くじ」なんて石を投げれば当たるレベル。既読も多い。
しかし、定番が揃っているがゆえに、安心して嫌な気分になれる(笑)


お気に入りは、
・「すっぽん」……パトリシア・ハイスミス
オチよりも、母親のウザさがホントにイヤ。


・「フェリシテ」……モーリス・ルヴェル
「ああ、厭だ……」と言うセリフが、これ以上様になる作品もない。
ルヴェルも読まんといかんなぁ。


・「ナイトオブ・ザ・ホラー・ショウ」……ジョー・R・ランズデール
クズたちの青春モノでありながら、やっぱりアメリカ南部はイヤ。


・「くじ」……シャーリイ・ジャクスン
これはイヤというより、のどかで、絶望が待ち受けているとはまるで感じさせない前半の巧さに感心してしまった。


・「シーズンの始まり」……ウラジーミル・ソローキン
アンモラルはソローキンの十八番だけど、解説を読んで、これも巧さに感心。


・「赤」……リチャード・クリスチャン・マシスン
「厭」で「赤」なら内容は想像つくけど、主人公のこの後とか、もういたたまれない。


・「うしろをみるな」……フレドリック・ブラウン
これは、もう巧いと唸るしかない。
わかっていても、振り返っちゃうね。
旅行中、ホテルに帰る電車内で読んでいた時のビクつきと言ったら(笑)