LIGHT

ライト [ マイケル・ジョン・ハリソン ]

『ライト』Ｍ・ジョン・ハリスン〈国書刊行会〉
ハリスン、久々の翻訳！

1999年ロンドン。物理学者マイケル・カーニーは、量子コンピュータ完成へのブレイク・スルーを間近に控えていた。しかし、彼にはそれより切実な問題があった。子供の頃にある光景を目にして以来、馬の頭蓋骨の姿をした怪物に追われる彼は、つねにダイスを振り、出た目にしたがって各地を転々とし、行きずりの女を殺すことで悪夢から逃げつづけているのだ……。
400年後、銀河の奥深くにひろがる、放射線エネルギーの大海、ケファフチ宙域。肉体を捨て宇宙船〈ホワイト・キャット〉と一体化し、宙航コンピュータであるシャドウ・オペレーターに十次元空間の操作を委ねながら海賊行為を繰り返す女船長セリア・マウは、謎の箱の手がかりを追うべく遺伝子の仕立て屋のもとへ向かう。それは捨てたはずの彼女の過去へと向かう旅の始まりだった……。
一方、ケファフチ宙域の異星人の遺物を漁る目的で発展した周辺地域〈ビーチ〉にあるヴィーナスポートでは、おちぶれた元宇宙船パイロット、エド・チャイアニーズが仮想空間に入り浸っている。やがて奇妙ななりゆきから〈パテト・ラオのサーカス〉潜り込み、未来予知の見せ物を行う羽目に。そのトレーニングで彼が見たのは……。

キャプションが詳しかったので、引用させてもらいました。


三つの物語、それぞれが面白く、読んでいる間は他の二つを忘れてしまう。それら、時間も空間も接点がなさそうな三つの物語が徐々にすり寄っていく様を、SFならではの描写で見せてくれる。一点に収束していく様子はブラックホールのイメージ図を思い起こさせる。
正直、ラストとかよくわからなかったんだけど、『2001年宇宙の旅』のラストでスターゲイトを通り抜けるような圧倒感がある。
この、時間を縦に貫いた感じは、『虎よ、虎よ』を読んだときに近いかも。ワイドスクリーン・バロックの現在の形か？