THE BRIEF HISTORY OF THE DEAD

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『終わりの街の終わり』ケヴィン・ブロックマイヤー〈ランダムハウス講談社
あらすじと、ネビュラ賞ノミネートにそそられて着手。

死者たちが暮らす街。そこは生きている人間に記憶されている間だけ滞在でき、彼らは平穏に暮らしていた。しかし、ある日、街が縮みはじめる。どうやら、致死率100%の新型ウイルスが蔓延し、人類が滅亡に向かっているらしいのだ。そして、南極基地には、ただ一人、ローラという女性が生き残っていた……

変な話と言うより、不思議な物語。
ネビュラ賞ノミネートだけど、SFっていう感想はないないぁ。
透明感ではなく「透明」な読書感。なんか透き通ったものを見ている感じなんだよな。
人類は確実に滅亡しようとしているんだけど、あの世の街も、南極基地のローラも世界から隔絶されているため、何が起きているのかは伝聞の伝聞ではっきりとはわからず、それに対しては何もできない。絶望感も、それを超えた『渚にて』のような静謐感もなく、かといって欲求不満にもならない。街に残っている人は必然的に、ローラの記憶にある人たちなんだけど、そこに発見的な興奮もなし。ただただ無色。
でも、それがつまらないわけではなく、あの世の街、南極基地、そして逃れられない死に対して、この筆致が合っているのかな。
色があるのは、それぞれが街に来る道のりの描写だけ。ウイルスに感染するとまばたきが止まらなくなる。最後の語り手が盲目の住人。この辺から、寓意的なものも読み取れそうな気もするけど……
ラストは『タウ・ゼロ』!? という読み方は間違い?