MORE THAN THE SUM OF HIS PARTS and Other Stories



『我は四肢の和を超えて』ジョー・ホールドマン〈ハルコン・SF・シリーズ2013〉
毎年恒例の、ハルコン・SF・シリーズも今年で4冊目。
この装丁は本当に楽しいよね。SF者に向けたパロディとしては一級品。
来年以降もお願いします!

「終りなき戦い」を初めとし、「終わりなき平和」「ヘミングウェイごっこ」「擬態−カムフラージュ」に於いてヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞等数々の栄冠を手にしているSF界の巨匠ジョー・ホールドマンの本邦初の短編集である。各作品も受賞こそ逃しているものの各賞のノミネートにあがったものである。一九四三年アメリ合衆国オクラホマ・シティに生まれ、メリーランド大学で物理学、天文学を学ぶ。一九六七年徴兵により陸軍に入隊し、ベトナム戦争に従軍した。その際に戦場で傷を負っている。しかし、その経験は「終りなき戦い」などに生かされることとなった。後にアイオワ大学で文学修士号を取得し、MITでは創作を教えている。また、画家としても活躍しており、その作品は日本SF大会のアートショーにも出品された。クローン達の織りなす絆の深さをハードボイルドタッチで描く「血の結び付きは濃く」不老不死の先に見えてくる思索を大作になぞらせ、機知に富んだ大いなる短編「四つの掌編」サイボーグ化による新しい身体を手に入れた者の行き着くところとは?「我は四肢の和を超えて」あらゆる形で生き延びていく人類。その素晴らしき未来は理想郷となるのか。

同人誌だけど、日本初のホールドマン短篇集。
短篇自体も、意外に既訳は少ないんだよね。


・「血の結び付きは濃く」Blood Sisters
探偵に警護の依頼にやってきた女性。
しかし、彼女の正体は富豪の娘の非合法クローンで、遺産相続の際にすり替えるために作られたのだった。
クローンはオリジナルの命を救いたくて、探偵のもとにやってきたのだが……


・「四つの掌編」Four Short Novels
不老不死となった世界で引き起こされる可能性を描いた四つの掌編。


・「我は四肢の和を超えて」More than the Sum of His Parts
大事故により、サイボーグとなった男。
リハビリのさなか、彼は新たな手足の真の力に気づき……


クローン、不老不死、サイボーグ、と人間の拡張をテーマにした作品で編まれている。
プロジェクトX』的展開と思わせておいて、意外な展開を見せる表題作もいいんだけど、個人的には「四つの掌編」がベスト。不老不死の世界になった、という前提を元に様々な可能性を広げてみせてくれる。この短篇集に限らず、最近読んだ中でも、結構好きな作品かも。


あとがきによると、刷数は1000部らしいので、手に入れたい方はお早めに。
現に『雪玉に地獄で勝算はあるか?』はネット通販終わってるし。