TOMORROW, INC.

読書記録を見ていると、SF、ほとんど読んでないな〜。むしろ、本当にSF好きなのか? SFサイト持ってるのに。とアイデンティティ、レゾンデートルを疑い始めた今日この頃。せっかくレア本を手に入れたので読んでみた。





『未来企業』マーティン・H・グリーンバーグ&ジョゼフ・D・オランダー編〈サンリオ〉
ビジネスをテーマにしたSFアンソロジー


 収録作品
・「発明の時代」……ノーマン・スピンラッド
 芸術に生きるため、狩りをしている暇もないという原始人。
 そこで、その従兄弟がその芸術を欲しがっている人間を見つけてきてやるという。 


・「すばらしい新造語」……J・フランシス・マッコーマス
 隣の部族に女でもさらいに行こうとする原始人の若者たち。
 しかし、その途中で武装した彼らと出会ってしまう。
 一触即発の中、リーダーがしたこととは?


・「幻影の街」……フレデリック・ポール
 いつもと同じような日々。
 ある日、男は同じ日が繰り返されていることに気づく……
 今ならヴァーチャル・リアリティで描かれると思うけど、 
 ラストの無力感は、これでないと表せないよなぁ。


・「囚われの聴衆」……アン・ウォーレン・グリフィス
 あらゆる商品が宣伝文句を喋る未来。
 それを扱う腹話術機械会社の敏腕副社長補佐。
 しかし、彼には悩みがあった……


・「夢を売ります」……ジョン・ジェイクス
 流行の容姿やパーソナリティを買う時代。
 産業スパイのフィニアンはライバル社に忍び込むが、
 そこで披露されていたのは、彼がかつて別れた恋人だった!


・「無意識の人間」……J・G・バラード
 巨大な塔は、人々の意識下に広告を刷り込んでいると主張する男。
 医者は彼を無視するが……
 おおっ!『ゼイリブ』!?
 自分たちが狂っていることにまるで気づいていない、気持ち悪い話でいいなぁ。


・「夢はひそやかに」……アイザック・アシモフ
 夢想家という特殊な才能を持つ人々の夢を記録し、それを売る商売。
 年々、そのビジネスモデルは変わっていき……


・「社内販売」……ロバート・シルヴァーバーグ
 惑星開拓にやってきた男。
 危険な生物はいないはずなのだが、物質転送機を組み立てる前に彼は怪物に囲まれてしまう。
 それを助けてくれたのは、ロボットのセールスマンで……


・「変革の時も変わらぬ商売」……ラルフ・ウイリアム
 地球人の文明度を測るため、複製機を与える異星人。
 それはどんなものでも複製でき、商売は成り立たなくなると思われるが……
 面白かったし、オチも好みなんだけど、冒頭の宇宙人は別に必要ないような。


・「ユートピアの犯罪者」……マック・レナルズ
 あらゆるものがクレジットカードで制御された社会。
 ほとんど有り金が残っていない男の計画とは?


・「信託」……ジョン・T・フィリフェント
 進入禁止の部屋に入った形跡を残したために社長に呼ばれた警備員。
 しかし、彼はまるで悪びれもせず、奇妙な機械を取り出した。


・「特許出願中」……アーサー・C・クラーク
 人の感覚を記録し、それを他人が経験できる機械を発明した博士。
 助手はそれで大儲けすることを考えつくが……


・「囚われのマーケット」……フィリップ・K・ディック
 未来を行き来できる老婦人。
 彼女は崩壊した未来へと行き、そこに注文品を届けて儲けていた。
 そのお陰で、金星へと向かうロケットが完成したのだが……


・「ただで手に入るもの」……ロバート・シェクリイ
 目が覚めると、奇妙な機械が目の前に。
 それは頼めばどんなものでも手に入る機械で、彼は好き勝手に使うのだが……
 最後に落とし穴がある三つの願いの変化球。


やっぱ、SFは楽しいね(笑)。今となってはクラシックでシンプルな作品ばかりなんだけど、十分に楽しめた。これくらいのSFが読みやすくて好きかなぁ。
それぞれの作品に、現実となったパーツがいろいろあって、うなずきながら読んでみたものの、予言しているなどと言うのはお粗末な気がする。それでも21世紀現在は十分にSFしてるなぁ、と改めて思ったり。中でも、常にコマーシャルに囲まれている「囚われの聴衆」やクレジットカード犯罪を描いた「ユートピアの犯罪者」は割と実現度が高いかな。
個人的お気に入りは、「幻影の街」「囚われの聴衆」「無意識の人間」「変革の時も変わらぬ商売」「ユートピアの犯罪者」「信託」あたり。