MACHINE MAN

機械男

機械男

『WWZ』*1といい、文春は突然単行本でSFを出すから侮れない(笑)

僕は機械しか愛せない。人間は非論理的だ。恋人も友人もいないけれど、でも人間と関係を結ぶなんて非効率で面倒くさいじゃないか。そんなある日、僕は職場の事故で片脚を失う。そのときひらめいたのだ。工ンシニアとしての才能を注ぎ込んで、生身より断然高性能の脚を開発しようと名づけて〈美脚〉。その出来は素晴らしく、僕は残る片脚も機械化した。これが僕の未来を開いてくれた――僕に共感を抱いてくれた初めての女の子、ローラとの出会い。恋の成就。会社が与えてくれた大規模な開発チーム。思いのままに研究を進められる自由。だが僕は知らなかった、すべての背後に社の軍需部門の思惑かあったことを。やがて暴走をはじめる開発チーム。姿をあらわす〈機械化兵士〉開発計画。それは僕の彼女、ローラまでも巻き込んでゆく。大地を揺るがして疾走し、轟音とともに跳躍する機械の脚。それを武器に、理系オタクは恋人のために死地に赴く。ダーレン・アロノフスキー監督で映画化決定、ガジェットとイノヴェーションの世紀を切り裂くギーク・サスペンス

嫌な感じの『ロボコップ*2
事実、ED-209みたいに階段が苦手とか、終盤のバトルとか、けっこう『ロボコップ』を意識しているように思える。


冒頭の携帯電話を探すシークエンスや高性能義足開発の様子は、ガジェットありきの小説ならではで楽しい半面、もっと主人公のコミュニケーション不全を強調しちゃっても良かったんじゃないかなぁ。『アルジャーノンに花束を*3に比べて、彼のパーソナリティが一人称にさほど現れていない。
主人公よりも、恋人のローラのほうがクレイジーな気がするんだけど。


SFとしては、人間機能の拡張とはいえ、健康な手足を切り落とそうとするのには、かなりの拒絶反応。ただ、読者との倫理観の齟齬が、SFを読むことの醍醐味のひとつじゃないかなぁ、とは思ってるんだよね。不思議なことに、同じ改造人間でも仮面ライダーとかには感じたことないんだけど(笑)
しかも、この作品におけるサイバネ化が社会全体に広がっていくのは止められず、主人公の行き着く先は非常にグロテスクなんだけど、それがまた強いSF感を与えてくれる。


映画化決定らしいけど、このジャリジャリした歯ざわりはアロノフスキーに合ってるかもなぁ。