MYSTERY STORIES

特別料理 (異色作家短篇集)

特別料理 (異色作家短篇集)

『特別料理』スタンリー・エリン〈早川書房 異色作家短編集〉読了
やはり、装丁を揃えたいので買ったんだけど、
実は旧版を持っていなかったことに今回初めて気づきました。
ずっとあると思ってたわ。

収録作品
・「特別料理」 The Specialty of the House
・「お先棒かつぎ」 The Cat's-Paw
・「クリスマス・イヴの凶事」 Death on Christmas Eve
・「アブルビー氏の乱れなき世界」 The Orderly World of Mr. Appleby
・「好敵手」 Fool's Mate
・「君にそっくり」 The Best of Everything
・「壁をへだてた目撃者」 The Betrayers
・「パーティーの夜」 House Party
・「専用列車」 Broker's Special
・「決断の時」 The Moment of Decision

そんなわけで、もちろん未読。


小咄系重視として、個人的お気に入りは、
・「特別料理」
 上司に誘われて行った、
 絶品の料理を出してくれるという小さなレストラン。
 確かにその料理は今までに食べたことがないほど素晴らしいのだが、
 実は、まれにしか出されない特別料理があるというのだ。
 通い詰め、ついにそれを食べるときがきた……!
 様々なアンソロジーに収められている古典的名作。
 題名の時点でネタは割れてるんだけど、
 描写がいちいち美味しそうなんだよねぇ。
 ラム肉を食べている人間の肩を叩きたくなります(笑)
・「クリスマス・イヴの凶事」
 弟を独り占めしようとしている姉。
 妻は階段から落ちて死んだのだが、姉が殺したに違いないと信じていた。
 しかし、証拠はない。
 二人の弁護士は、いつまでも悲しんで引きこもっていてもしょうがない、
 と外に出るように薦めるが……
 よくあるタイプの話と思いきや、ラストで……
・「アブルビー氏の乱れなき世界」
 ガラクタばかり集めたような骨董店を営むアブルビー氏。
 無論、売れるはずもなく、逆に売れてしまうと悲しくなってしまう。
 彼は経済的余裕がなくなってくると、金を持っている女と結婚し、
 事故に見せかけて殺すと言うことをくり返してきた。
 そろそろ、また相手を見つけようというとき、
 全く趣味に合わないが、今までは比べものにならないほどの資産家と知り合う。
 彼女と結婚するのだが……
 これはオチで笑っちゃいました。好み。
・「君にそっくり」
 好男子なのだが、資産も家柄もないアーサー。
 ある日、勘当された名家のチャーリーと知り合う。
 部屋に一緒に住む代わりに、彼から仕草などを吸収する。
 それは上手く行き、社長令嬢をデートに誘うことに成功したのだが、
 金がないため、チャーリーへの仕送りを奪うため殺してしまう。
 死体も隠し、ついには結婚の日取りまで相談するようになったのだが……
 「アブルビー氏」と似たタイプ。
・「決断の時」
 人格者で、誰からも尊敬されているヒュー。
 ある日、近所にある古くからの屋敷にレイモンドという元手品師が引っ越してくる。
 どうにも二人は性格が合わず、会う度に言い争う。
 レイモンドは屋敷を改築しようとしていることを知ったヒューは、断固それを許そうとせず、
 昔使っていた使用人を懲らしめるための箱からレイモトンドが脱出できたら、
 自分もここから出て行こうと賭けをすることに。
 これは結局、どちらしても、ヒューは負けるってことなのかな。


「好敵手」じゃないけど、
本人は素晴らしい最初の一手を差し、全てが上手く行く、と思っているんだけど、
実は、その時点ですでに手詰まりになっていることに気づいていない作品ばかり。
読者は、ただ意地悪にチェックメイトまで傍観していればいい、
という短篇集。
それなのに、後味が悪くないのはなんなんだろうなぁ。
他の異色作家短篇集と比べると、ほとんどミステリー分だけど、
未読の方は(あんまりいないと思うけど)オススメです。