The Touch of Nutmeg Makes It and Other Stories

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ナツメグの味』ジョン・コリア〈河出書房新社 KAWADE MYSTERY〉
KAWADE MYSTERYも順調に刊行が進んでいます。

収録作品
・「ナツメグの味」The Touch of Nutmeg Make It
・「特別配達」Special Delivery
・「異説アメリカの悲劇」Another American Tragedy
・「魔女の金」Witch’s Money
・「猛禽」Bird of Prey
・「だから、ビールジーなんていないんだ」Thus I Refute Beelzy
・「宵待草」Evening Primrose
・「夜だ!青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる!」Night! Youth! Paris! and the Moon!
・「遅すぎた来訪」Are You too Late or was I too Early
・「葦毛の馬の美女」The Lady on the Grey
・「壜詰めパーティ」The Bottle Party
・「頼みの綱」Rope Enough
・「悪魔に憑かれたアンジェラ」Possession of Angela Bradshaw
・「地獄行き途中下車」Half Way to Hell
・「魔王とジョージとロージー」The Devil, George, and Rosie
・「ひめやかに甲虫は歩む」Softly Walks the Beetle
・「船から落ちた男」The Man Overboard

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)』を読んだときもそうだったんだけど、どうもコリアはちょっと趣味に合わないなぁ。
異色作家なんだけど、他の異色短編とネタが同じで調理が違う。見た目も匂いもスパイシーなのに、味はまろやかというか。そこに驚きよりも、スパイシーなのが食べたかったのに……という感じ。


個人的お気に入りは、
・「ナツメグの味」
 新しく会社にやってきた男。
 神経質そうで、人一倍控えめだが、やがて親しくなる。
 実は、彼は親友を殺した容疑をかけられたが無罪になった男だった。
 それはもう過ぎた話だと、付き合うのだが……
 これはかなり好き。
 よく題名を目にするだけあって、無駄なく傑作。
 山岡士郎は人を殺しかねないと言う話(笑)


・「猛禽」
 若夫婦が飼っていた鸚鵡。
 ある晩、その鸚鵡が何かに襲われる。
 しばらくすると、卵を産むのだが……
 ちょっと描写が野暮ったいけど、意地悪な存在の正体が……


・「宵待草」
 デパートに潜り込み、そこで生活しようと決めた男。
 しかし、実は同じような人々が多くいて、もう一つの世界ができていた。
 そこにいつも邪険に扱われている少女がいて……
 『ネバーウェア』を思わせる、異様な物語。


・「夜だ! 青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる!」
 金欠で部屋を貸すことにした男。
 しかし、明け渡す時間になっても用意ができず、彼はトランクの中に身を隠す。
 入居者は美人で、彼はトランクの中から彼女を眺める生活を始める……
 これはもろに異色短篇の定型なんだけど、オチがかなり変。
 なんだそりゃ感たっぷりで笑える。


・「船から落ちた男」
 これは『千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 (創元推理文庫)』で既読なんだけど、やはりいいなぁ。
 SFマインドあふれる傑作だと思うんだけど。