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無限がいっぱい (異色作家短篇集)

無限がいっぱい (異色作家短篇集)

『無限がいっぱい』ロバート・シェクリィ早川書房 異色作家短篇集9〉読了
こちらは旧版で持ってたけど、並べたかったので買ってしまいました。
読んでなかったし。

 収録作品
・「グレイのフラノを身につけて」Gray Flannel Armor
・「ひる」The Leech
・「監視鳥」Watchbird
・「風起る」A Wind Is Rising
・「一夜明けて」Morning After
・「原住民の問題」The Native Problem
・「給餌の時間」Feeding Time
・「パラダイス第2」Paradise II
・「倍額保険」Double Indemnity
・「乗船拒否」Holdout
・「暁の侵略者」Dawn Invader
・「愛の語学」The Language of Love

異色作家短篇集というよりSF短篇集。
破局』と比べて、自分はやはりSF者なんだと実感。


それはさておき。お気に入りは、
・「風起る」
 強風の惑星。
 施設の修理のために専用車で外に出るが、風は強まり、
 巨大な岩石が弾丸のように飛んでくる。
 基地の方も土台が揺れ始め……
 あらすじだけだと普通だけど、ラストの絶望感がたまらない。
・「原住民の問題」
 未開発の惑星に一人で植民した男。
 そこに、100年以上前に出発した旧式の宇宙船が到着した。
 しかし、彼らは男のことを原住民と見なし、惑星を領有しようとしてきた。
 そこで男が取った行動は? 
 植民地支配を苦々しく描いた作品。
・「給餌の時間」
 古本屋めぐりが趣味の男。
 ある店で見たこともない本を見つける。
 それは「グリフォンの管理と飼育」。その内容は……
・「パラダイス第2」
 居住可能な惑星を見つけた二人組。
 しかし、そこは住人が全滅していた。
 軌道に浮かぶ人工衛星を調べることにするが、一人が落とし穴に落ちてしまう……
 グルメもの? 冒頭とラストで対になってるのが笑える。
・「乗船拒否」
 出発直前の宇宙船。
 しかし、古参の乗組員が、新入りの人種が気に入らないと言い出した。
 人種差別などとうの昔になくなり、彼自身も他の船員と問題を起こしたことはない。
 どちらを抜いて出港するわけにもいかない。
 説得を続けるが、その理由は?
 なかなかバカらしくてよろしいです。
 ひいては、人種差別自体が全く理由のないバカらしいもの、ということ。
・「愛の語学」
 恋人に、どうやって自分の想いを言葉にしたらいいのかわからない青年。
 すでに滅んだ惑星の愛の言語を唯一マスターしている博士の元に旅立つ。
 そこで厳しい授業を受け、ついに……
 これが一番笑えるなぁ。「どちらかと言ったら、好きかもしれない」って、そりゃ怒るよ。


 昔っから思ってたんだけど、『塊魂』って「ひる」に似てない?


 全体的にアメリカ人作家と意識させる作品が多い。
 SFとしてはさすがに古さを感じるけど、皮肉は今も効いている。