THE GIRL WITH ALL THE GIFT

パンドラの少女

パンドラの少女

『パンドラの少女』M・R・ケアリー〈東京創元社

奇病の爆発的な蔓延〈大崩壊〉から二十年。人間としての精神を失い、捕食本能に支配された〈餓えた奴ら〉により、文明世界は完全に崩壊していた。荒廃したイギリスの街で発見された、奇跡の少女メラニー。持たないはずのものをもつ健気な彼女は、この世界の救世主ではないのか? ロンドンの北の軍事基地で、メラニーと、同じような特徴をもつ子供たちへの教育・研究が進められるなか、緊急事態が勃発。メラニー、彼女が大好きな教師、科学者、兵士ふたりの極限の逃避行がはじまる。一気読み必至、圧巻のエンターテインメント長編!

ゾンビ・アポカリプスもので、ヒャッハー!で、「最後のクラス写真」*1で、『アイ・アム・レジェンド*2で……


近年爆発的に増えたゾンビジャンルの中でも、傑作に数えていいんじゃないかなぁ。
映画やるらしいけど、クソ改変されず、原作どおりだったら凄いよ。


謎のゾンビ・パンデミックにより、文明が崩壊してから20年がたった世界。
まず、このゾンビのメカニズムが、数年前に話題になった、アリに寄生してゾンビ化させてしまう菌類がモデルになっていて、非常に良い。


虫が苦手な人には閲覧注意だけど、この辺を見ておくとイメージしやすいと思う。


最近のゾンビジャンルで、動く死体なのか、極めて死ににくい生物なのか、なんで人を襲って食べるのか、感染するのか、明確に説明されている作品はあまりないと思う。
そんな中、本作はこの疑問に納得の行く答えを出し、さらにそのアイデアと物語が不可分。


異様な状況下に置かれている主人公のメラニーが何者か、というのは最初のほうですぐに分かる。それ自体は物語の推進力ではない。
彼女は、原題にある"全てを贈られた少女"であり、それは、ゾンビでありながら感情と高い知能を持っていること指しているように思える。
しかし、「全てを贈られた少女」とはパンドラのことで、それはなにを指すのか?


メラニーは悲しい生い立ちでありながら、才気煥発で頑張り屋という世界名作劇場的wな主人公。
彼女と行動をともにするのは、慕う先生と意地悪な博士、厳しい軍人に頼りない若者、とこれまたハウス名作劇場に置き換えられそうな面々。
終盤で彼らの前に立ちふさがる壁と、新たな世界の夜明け。
メラニーほどの才能と知識を持つ子ならば、その決断は納得。これを踏まえると、邦題はハマってるかなぁ。
ただ、まさに「最後のクラス写真」なラストの絶望感を、メラニーは理解できてないよなぁ……。
映画ではどうなってるんだろう。