Magical Girl



『マジカル・ガール』鑑賞


日本の魔法少女アニメにあこがれる少女とその家族がたどる、思いがけない運命を描いたスペイン映画。独創的なストーリーや全編を貫くブラックユーモアが話題を集め、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭でグランプリと観客賞を受賞するなど、高い評価を獲得した。監督はこれが長編映画デビュー作となる新鋭カルロス・ベルムト。白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。ユキコのコスチュームを着て踊りたいというアリシアの夢をかなえるため、失業中の父ルイスは高額なコスチュームを手に入れようと決意する。しかし、そんなルイスの行動が、心に闇を抱えた女性バルバラやワケありな元教師ダミアンらを巻き込み、事態は思わぬ方向へと転じていく。

いまだかつて、これほど萌えない魔女っ子シーンはあったであろうか?
邦題は『魔法少女ユキコ』でもよかったようなw


恵比寿には、映画で使用されたステッキとレリーフがありました。
 


長山洋子「春はSA-RA SA-RA」でまず持ってかれる。

確かに、一昔前のアニメ主題歌っぽいんだよね。


白血病で余命いくばくもない娘のため、金策に走る父がたどる地獄めぐり。


プレゼントに喜びながらも、父の思いをくんで、何気ない風を装いながら「あれ ?ないのかな?」と箱の中を探るアリシアの仕草がもうたまらない。
それを受けての、マジカルステッキの値段をクリックした時の、「あちゃぁ…」という父の頭を抱え込む姿も悲惨だけど笑ちゃう。
ちゃんと調べれば、一点ものじゃなくて、メーカー品があったと思うんだけど、お父さんはそういうの疎いからなぁ。


主な登場人物は4人。
しかし、それぞれの背景はほとんど語られず、ちょっとした台詞や映像からほのめかされる闇は限りなく濃い。
それゆえ、観客に解釈を委ねるウェイトが大きく、「ちゃんと説明してよ!」という人には向かないかも。逆に、鑑賞者同士の深読み/解釈の言い合いをしたい向きには是非オススメ。


誰が悪いというのはなく、それぞれの利他を願った善意が引き起こす悲劇の物語。冒頭でアリシアが「タバコ吸いたい」というシーンだけで、口にしないけど、お互いを思ってるのがわかるんだよね。
あえて言うなら、発端である父親ルイスが一番悪いかなぁ。知人からのアドバイスをもらいながら、娘と対話しないし。バルバラの旦那もなんだけど。


以下、ネタバレ解釈。


やはり、焦点はバルバラとダミアンの関係。


性的な関係があったかはわからないけど、バルバラが小学生の頃から、ダミアンは翻弄、操られてきたと推測できる。
卒業後も会っていたことは台詞からも伺える。
決定的な出来事は、10年前に起きていて、それが理由でダミアンは刑務所に。
バルバラの体が傷だらけなのを見ると、それが関係しているようで、売春組織のおばちゃんから離れるために、ダミアンを言いくるめて、利用したんじゃないかなぁ。
しかし、ルイスの言葉を聞いて、今回同様、10年前もいいように使われたことにダミアンは気づいてしまう。
だから、同じ年頃のアリシアバルバラを見て殺してしまい、バルバラ自身には浮気の証拠を渡さない、という呪いをかける。


ちなみに、二人の間に何があったかは、監督も「わからない」とかw