THE EYE OF GOD




『神は全てをお見通しである』ピーター・ワッツ〈ハルコン・SF・シリーズ2014〉

吸血鬼が船長の宇宙船がエイリアンとのファーストコンタクトを行うという装いとは異なり、意識に対する深い洞察から生み出された『ブラインドサイト』は多くの国で翻訳され人気を博しており、『SFが読みたい2014年版』海外篇で二位を獲得した。そのピーター・ワッツのデビュー作を含む日本初短編集である。一九五八年カナダのアルバカーキカルガリー生まれ。ゲルフ大学やブリティッシュ・コロンビア大学で学んだピーター・ワッツは海洋生物学者兼SF作家である。ゲームのノベライズ等も手掛け、プロガーとしても知られる。クリエイティブ・コモン・ライセンス活動にも参加し、自身の著作物をホームページに公開している。人食いバクテリアに感染して死にかけたり、米国の国境警備隊に殴られて入国禁止になったりしている。自由意思は何処まで自由なのか何処まで踏み込めるものなのか認識のあり方を考えさせる『神は全てをお見通しである』。意思疎通さえ不可能なものを理解していけるのか?『光差す雲』。海洋生物学者としての知識を生かしたデビュー作『適者生存』は深海での人類の生き様を描き、オーロラ賞を受賞。後にRifters三部作ともなる初長編『Starfish』に取り込まれた。

すっかり恒例となった〈ハルコン・SF・シリーズ〉も5冊目。
しかも、『ブラインドサイト』*1の記憶も新しいピーター・ワッツの日本初の短篇集。


収録作品
・「神は全てをお見通しである」
・「光差す雲」
・「適者生存」


『ブラインドサイト』にも通じることだけど、異形、アウトサイダー、マイノリティを等しく受け入れられるのはテクノロジーだけ、と読めるが、否応なくそれぞれのオリジナリティを均質化してしまうのでは? という不安感も同居している。しかし、人間という種が存在し続けるためにはテクノロジーの変容が必要なのか?
このモラル、認識が上書きされる感覚がSFの醍醐味の一つだと思うんだよね。