Le passe


『ある過去の行方』鑑賞


イラン映画で初めてアカデミー外国語映画賞を受賞、ベルリン国際映画祭でも金熊賞を含む3冠を達成した「別離」(2011)のアスガー・ファルハディ監督が、初めて国外を舞台に撮り上げた長編作。子連れのカップルが再婚を考えるが、娘の告白がきっかけで、それぞれの過去や本心が次々と明らかになり、見えなかった真実が浮き彫りになっていく様子をサスペンスタッチに描いた。夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。アーマドはマリーの新しい家庭と生活を目の当たりするが、そこにはどこか不穏な空気が流れていた。長女リュシーとの関係がうまくいっていないというマリーから、娘の本音を探ってほしいと頼まれたアーマドは、リュシーの話を聞くことになるが……。主演のマリー役は「アーティスト」のベレニス・ベジョで、カンヌ映画祭女優賞を受賞。

男を空港に迎えに来た女。
親密そうな空気を醸し出すが、それは車の中だけ。
家に着くと、どこか不穏な気配が。
彼女は妻ではないのか? 家にいるのは娘でないのか?
届いていないメールは? なぜホテルの予約がされていないのか?


疑問符だらけのスタートで、徐々に明らかになっていく状況。
アーマドはイランに帰った元夫で、マリーが今の恋人と結婚するために、離婚調停に彼をパリに呼んだのだ。
これで一旦は状況が整理されるが、現在の恋人の妻は自殺未遂で昏睡状態。その自殺の原因はマリーではないのか? という新たな疑惑が投げかけられる。


ここから後半は、まさに『藪の中』
関係者の証言は食い違い、全てを語らない。
娘や使用人を怒鳴りつけるけど、一番悪いのは不倫関係にあった二人だよなぁ。

主演のベレニス・ベジョは、『アーティスト』の時はキュートな新人女優、『タイピスト』は素敵でできる奥様だったんだけど、今回は疲れて、神経質そうな主婦役。メイクや際立った体型のコントロールがあるわけじゃないんだけど、見事に顔が変えられる俳優だよなぁ。


以下ネタバレ(?)


クリーニングのドレスに汚れつけたのって、息子だよね?
何度も出てくる割には、汚れの原因は最後まで語られないけど、イタズラなのか、事故なのかわからないけど、それまでの様子を見てると、息子がやったように思える。
二階の住居から、下のクリーニング店に降りるのが怖い、というセリフは母親の自殺を思い出すからのように見えるけど、イタズラを示していると思うんだよなぁ。
この息子の困り顔は絶品w