魔女の宅急便



『魔女の宅急便』鑑賞


宮崎駿監督によるアニメーション映画版が広く親しまれている角野栄子の児童文学「魔女の宅急便」を実写映画化。13歳になった魔女の血を引く少女キキは、掟に従い、一人前の魔女になるため修行の旅に出る。黒猫ジジと一緒にほうきに乗って旅立った彼女は、やがてたどり着いた海辺の町コリコで、パン屋のおソノのもとに居候することに。そこで空飛ぶお届けもの屋「魔女の宅急便」を始めたキキだったが……。主演はオーディションで選出された新人女優の小芝風花。「呪怨」シリーズや「ラビット・ホラー3D」など数々の恐怖映画を送り出してきた清水崇監督が、児童文学の映画化に挑戦。脚本に「おおかみこどもの雨と雪」の奥寺佐渡子。

その名を聴いたら、過半数がアニメの画面が脳裏に浮かぶであろう、この作品。
なんで実写化したの? 誰得?
メディアが違うんだから比較するのは無益とわかってるんだけど、ジブリ*1を意識するなというのが無理な話。というか、作り手がアニメを意識してるように見えちゃうんだからしょうがない。
あくまで、アニメではなく、小説版*2の実写化というのなら、ロングヘアーだよなぁ。せめて、ショートカットはやめるべき。それだけで、十二分にアニメと印象が被っちゃう。それとも、最初はアニメ版の実写化として動いていて、なぁなぁでやり過ごそうと思ったら、ジブリから待ったがかかったとか?


個人的には、昭和40年代あたりの日本に似た世界で、離島が多い海街、という改変は悪く無いと思う。便数の少ない船を待つよりは、空飛ぶ「魔女の宅急便」の方が早い、という必然性が生まれるから。ただし、せっかくのその設定はあまり生かされず、拠点にしているコリコの中を回ってるだけのように見えちゃうんだよね。


この手の物語は、胡散臭く見られている主人公が、徐々に信用を得ていき、途中で失敗によるスランプがあるのがパターン。しかし、本作は、非常に悪意ある風評被害というキキの力では抗えない自体がスランプの原因で、見ていて結構しんどい。届け先のババアに金投げつけられるとか、そこに嫌なメロドラマ的展開を入れなくても。


特撮がちゃちいことはこの際目をつぶろう。いや、やっぱ一言w 飛行シーンが絶望的に不自然で、その金も技術もないのなら、飛んでるところは極力減らして、「飛んでやって来た」的な工夫の仕方があったんあじゃないかなぁ。飛行シーンでアニメに、しかもジブリに勝てるわけないんだし。その分、人間とのコミュニケーション増やすとか。


その他にも練度が低い部分はたた散見される。別れ別れになったジジが何事もなく帰ってくるとか、あの世界には電報的なものはないのか?とか、コリコに魔女がいたのは百年前と言ってる割には小さいマツコ・デラックス似の歌手の死んだ姉が魔女だったとか(他の町で死んだと好意的に解釈できるけど)、その彼女の歌も完全に21世紀風でまるで世界にそぐわないとか、カバの尻尾がライオンに齧られるってどういう状況?とか、手紙を依頼した女の子と友達なる描写が結局無いとか、嵐で船は出せないと言いながら魔女は飛ばせようとするデリカシーの無さとか、とかとか……。
あと、イシ先生に頼りっぱなしはまずくない? 連絡取れないのに。
重箱の隅をつつきたくなる時点で、物語に没入できてないんだよなぁ。特撮がイマイチなんだから、物語や展開の整合性はちゃんと考えるべきだよなぁ。これで通用すると思ってるなら、お気楽すぎる。


まぁ、もう一回ジブリ版観たほうが有意義な時間を過ごせますよ。


唯一、弁護するなら、主演の小芝風花は可愛いんで、今後も頑張って欲しい。