Eighty Days: Nellie Bly and Elizabeth Bisland's History-Making Race Around the World

ネリー・ブライとエリザベス・ビズランドというふたりのジャーナリスト。それぞれ「ワールド」紙、「メトロポリタン」誌の編集に携わりながら、世界にネットワークを広げ始めた交通機関を使って、世界を一周する速さを競うことに。ブライは東回り、ビズランドは西回り、はたしてどちらが先にニューヨークに戻ってくるのか、そもそも女性の一人旅は成功するのだろうか? アメリカ中がその話題で持ちきりになった事件を追った、ノンフィクション。

八十日間世界一周*1のテーマを聞くと、『世界ビックリ大賞』が先に思い浮かぶ世代です。



19世紀、ヴェルヌの『八十日間世界一周』よりも早い記録が出せるとアメリカを出発した二人の女性。東回りはボーイッシュでスクープ命、度胸と愛嬌を併せ持つ、北部出身のネリー・ブライ。かたや西回りは、南部の名家の生まれで、文学をこよなく愛し、どんな男も魅了してしまう美女のエリザベス・ビズランド。
って、それなんてラノベ? というかジブリ


こんな面白おかしいイベントが、今から百年以上前に行われていたとは知りませんでしたよ。
というか、アメリカでも現在では知る人の少ない話だとか。
しかし、1890年頃のアメリカでは社会現象と化し、ゴールの時は大統領もかくや、というほどの出迎えだったらしい。


当時の状況を知らなくても、言い出しっぺで、男勝りのネリー・ブライを応援したくなるのが人情w事実、当時の様子を見ると、美人というよりはかわいいと表現され、「これからのアメリカンガール」としてかなり好意的に迎えられていたみたいだけど、彼女自身のコメントは結構キツイことが多々あるんだよね。アメリカ万歳は絶対に揺るがないし。
一方のエリザベス・ビズランドは真似っ子(彼女の発案じゃないんだけど)で、影も薄い印象なんだけど、彼女が記している各国の滞在記は非常に魅力的で、特に日本を気に入ってくれるので、日本人としては応援したくなっちゃうw


現在の「時間」の黎明期の物語。つまり、交通や運搬が時刻表基準になり始めた時代で、ネリーはそれを見て八十日以内に世界一周できると計画するんだけど、もちろん、21世紀ほど正確ではないし、そもそも汽船が海の状況に激しく影響されてしまうので、かなり運に左右されてしまう。
レースの行方もその運が非常に良いスパイスになっている。
二人が唯一交錯する香港の港や、賄賂によってチャーターした船に対する怪情報など、ノンフィクションなのになかなかスリリング。


この3ヶ月に満たない旅行が二人の人生の絶頂と思いきや、その後の人生もなかなか波瀾万丈。
作中では、二人の人生は不思議と似ていると記しているけど、男性優位社会というバイアスの中、やる気にあふれた女性が自分の才覚を発揮させようとしたら、同じような道をたどるんじゃないかなぁ、と思った。


このネリー・ブライのイラストは、実は後のシャーロック・ホームズのアイコンの元になった……なんてことはないかしら? それにしても、女体化ホームズに見えるなぁ。