短編小説日和

短篇小説日和―英国異色傑作選 (ちくま文庫)

短篇小説日和―英国異色傑作選 (ちくま文庫)

短篇小説はこんなに面白い! 十八世紀半ば〜二十世紀半ばの英国短篇小説のなかから、とびきりの作品ばかりを選りすぐった一冊。ディケンズグレアム・グリーンなど大作家の作品から、砂に埋もれた宝石のようにひっそりと輝くマイナー作家の小品までを収める。空想、幻想、恐怖、機知、皮肉、ユーモア、感傷など、英国らしさ満載の新たな世界が見えてくる。巻末に英国短篇小説論考を収録。


 収録作品
・「後に残してきた少女」……ミュリエル・スパーク
・「ミセス・ヴォードレーの旅行」……マーティン・アームストロング
・「羊歯」……W・F・ハーヴィー
・「パール・ボタンはどんなふうにさらわれたか」……キャサリンマンスフィールド
・「決して」……H・E・ベイツ
・「八人の見えない日本人」……グレアム・グリーン
・「豚の島の女王」……ジュラルド・カーシュ
・「看板描きと水晶の魚」……マージョリー・ボウエン
・「ピム氏と聖なるパン」……T・F・ポウイス
・「羊飼いとその恋人」……エリザベス・グージ
・「聖エウダイモンとオレンジの樹」……ヴァーノン・リー
・「小さな吹雪の国の冒険」……F・アンスティー
・「コティヨン」……L・P・ハートリー
・「告知」……ニュージェント・パーカー
・「写真」……ナイジェル・ニール
・「殺人大将」……チャールズ・ディケンズ
・「ユグナンの妻」……M・P・シール
・「花よりもはかなく」……ロバート・エイクマン
・「河の音」……ジーン・リース
・「輝く草地」……アンナ・カヴァン

フェードアウトしていくものも、ショッキングなラストもあるんだけど、全体的に読後感がしんみりしたものが多かった印象。


お気入りは、
・「ミセス・ヴォードレーの旅行」
幼年時代に過ごした屋敷に数十年ぶりに訪れた男。
そこに暮らしていた夫人は遠い昔に行方不明になっていた。
実は、その当時に屋敷にいた男は、何か見たのではないかと思考実験をする……
これはミステリだなぁ。


・「羊歯」
ごくごく平凡な男。
彼は、とある山の中に、非常に珍しい羊歯を見つける。
近いうちに、その土地を買い取ろうと考えているのだが……
このアンソロジーでは、これのラストが一番衝撃的だったかなぁ。


・「決して」
田舎町から出て行きたい少女。
意を決して、ついに駅に向かうが……
何をやっても出られない運命とも、すべてが妄想とも読めるけど、閉塞感と、町に出ることへのためらいが同時に現れている。


・「豚の島の女王」
無人島で見つかった、奇妙な白骨。
そこに秘められた悲しい物語とは……
何度目かの既読。
骨格は単なる無人島での愛憎劇なんだけど、登場人物によって、幻想味が加わっている。


・「小さな吹雪の国の冒険」
プレゼントを買うために入った玩具店
そこにあったスノーグローブに見入っていると、気づけば助けを求める姫の城に……
水上悟志の「伝説の男」*1に脳内変換(笑)


・「告知」
図書館で本を物色する男。
過去の新聞で、自分の出生の告知を見つけ……
「あっ!」と何かが落ちる、背中を押される感覚がたまらない。

・「写真」
病で臥せっている少年。
家族は、思い出にと一緒に写真を撮る……
色々とひどすぎる。


・「ユグナンの妻」
久々に出会う友人の家は迷宮のように増築されていた。
その奥にいる妻とは?
これ、クトゥルーもの!?