大奥 10 (ジェッツコミックス)

大奥 10 (ジェッツコミックス)

春日局様は女性にございます」


驚きも何もなく常識であるはずのこの一言に、背筋が凍るほどのセンス・オブ・ワンダーを含めたのが、『大奥』の第一巻*1のラスト。
これだけで、十二分に傑作SFの資格は得たも同然。


六代将軍家宣の時代から物語は始まり、家光の時代に遡ってから編年体で進み、とうとう10巻で十一代将軍家斉が登場。


これまでも、パラレルワールドではなく、我々の歴史につながるんだろうなぁ、ということはちょいちょい匂わされていたけど、今回は決定的。


赤面疱瘡の治療研究という未来ある目的のために、田沼・源内・青沼というエネルギッシュな主人公たちが活躍してきた最近のエピソードだったけど、権力闘争により、無残な最期を遂げていく三人。しかも反動政治により改革も止まると思いきや、三人の犠牲によって最大の反動がもたらされる。


1巻のラストぶりの、そして最大のセンス・オブ・ワンダー!男女逆転世界におけるジェンダーSF的発想は、一周して我らの世界に接続される。そのお手並みは鮮やかという他ない。
お見事。