District 9

第9地区』鑑賞


エビ、頑張れ!


ここ最近のSF映画としてはベスト級だなぁ。少なくとも、青い原住民より圧倒的に面白いですよ。フェイクドキュメンタリーの体裁で、アナウンサーの後ろに宇宙人が映っただけで小躍りですよ。


突然ヨハネスブルグ上空に現れた巨大な宇宙船。しかし、侵略するでも、高度な文明を授けてくれるわけでもなく、単に膨大な数の難民と化した宇宙人をどうするか……という思考実験だけでなく、ガジェット、SF映画的展開もよく組み立てられている。しかも、それだけで終わらない。
舞台がヨハネスブルグという時点で、ポイントがひじょうに高い。その歴史といい、佇まいといい、外の人間からしたら、あの街自体がエイリアン的なんだよね。その街の人々が宇宙人を差別するという繰り返し。
この宇宙人、通称エビの造形の勝利だよなぁ。
それに対する主人公ヴィカスの小市民ぶりは、観客の代弁者であり、最初はエビの描き方が、バカで、不潔で、害虫同然に廃除すべきものとして映る。彼らの卵に火をかけて弾けるポップコーンのように処分。それも特に何も感じない。
エビの姿も初めは遠巻きで、ホントにエビみたいなんだけど、しばらくすると服をまとい始め、ちゃんと生活している風景が映り、ぐっと近づき、子どもが出てきた時点でエビへの感情移入まであと一歩。さらに進むと、目線がエビとなり、逆に人間のほうが弾けるポップコーンとして描かれる。前半と後半で、暴力の描き方のシフトが見事。人間側は大企業とギャングが出てくるんだけど、両方ともやってることは同じで、エビばかりか同胞である人間でさえも食い物にする。
そもそも、エビは悪いことをやってるシーンがないにも関わらず、見た目の嫌悪感だけでレッテルを貼り、それが差別問題の根底にあると、SFならではの設定を使って教えてくれる。
SF映画としても面白く、是非オススメ。


猫缶100個分のパワードスーツはSF映画でも最強レベルの攻撃力かと。
ところで、エビは何語喋ってるの? エビ語? 訛った現地語?