ANGELS' BLOOD

青の瞳をもつ天使 (イソラ文庫)

青の瞳をもつ天使 (イソラ文庫)

『青の瞳をもつ天使』ナリーニ・シン〈ハヤカワ・イソラ文庫14〉
春のシン祭第2弾。

天使、ヴァンパイア、人間が共存する世界。百年の奉公と引き替えに永遠の命を天使に授けられるヴァンパイア。そこから逃げ出したヴァンパイアを捕まえるのがハンターの仕事。腕利きハンターのエレナは、世界を支配する大天使の一人、ラファエルから堕ちた大天使の追跡を依頼される。断ることも、失敗も許されない。死と隣り合わせの毎日をラファエルと共に過ごすうちに、エレナは彼の危険な魅力に囚われていく……

古典の名文を引用するならば「私、ジュンとなっちゃったんです」
というわけで、発情度は高し。


それはさておき。
やはり、シンは設定が面白い。
発想や文法がSF・ファンタジーに近く、過保護な説明がなく、読んでいるうちにパラロマ設定が飲み込めるように書かれているのが上手い。いわゆるヴァンパイア・ハンターや天使とは印象を崩しているのもなかなか。
しかも、パラノーマル・ロマンスにありがちな、設定がロマンスの添え物だったり、それをロマンスにしか使わないのはもったいないというフラストレーションもなく、それだけで十分に成立している。そういう意味では、成年誌時代の平野耕太に近いかも(笑)というか、設定が書きたくてパラロマ書いてんじゃないの?
キャラクターも上手く、特にラファエルを守るザ・セヴンの面々が外連味たっぷりで楽しい。
ロマンス的ラストはあまりに都合よすぎてイマイチだけど、シリーズものとしてはラストの一文は最高に引きが強い。もうロマンスやめて、大天使戦争ものにシフトしてくれないかなぁ。無双シリーズばりにキョンシーをなぎ倒す感じで。


今年1年頑張れば、ロマンスの神様が降りてきてくれるかと思ってたけど、3冊目で飽きてきた……
ロマンスがそうなのか、パラロマだからなのか、たまたまなのかわからないけど、パターンが一定なんだよなぁ。
男の方は世界(コミュニティーの大小はあるけど)最強、女は才能と独立心あふれる。二人にその世界の命運がかかっている。ある意味セカイ系(笑)。ヴァンパイアや狼男が主人公になっていることが多いのは、野生味や危険を具現化しているんだけど、これは「君のためなら世界を敵に回す!」的な観念をストーリーとして構造化しているのかな。
設定だけならSF・ファンタジーと従姉妹だけど、明らかにストーリーの幅が狭い(これまでに読んだ限り)。そういう点はお菓子と同じ。キャラの種族が違うだけだと、続けて読むのはきついなぁ。パラノーマルなんだから、もっと滅茶苦茶なのないの?官能レーベルで『狂鬼降臨』*1が出たように(笑)