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十字の刻印を持つふたり―アニタ・ブレイク・シリーズ〈1〉 (ヴィレッジブックス)

十字の刻印を持つふたり―アニタ・ブレイク・シリーズ〈1〉 (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ローレル・K.ハミルトン,Laurell K. Hamilton,小田麻紀
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 文庫
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アニタ・ブレイク・シリーズ第1弾。
よくあるパラノーマル・ロマンスだと思ってスルーしてたんだけど、面白いという噂を小耳に挟んだので着手。

アニタ・ブレイク――チャイナドールのように華奢で美しい若き女性。だが彼女の職業はふつうではない。特殊な技能で死者を蘇生させるのが仕事。さらに彼女には裏の顔があった! 罪を犯したヴァンパイアを殺す処刑人として、闇の社会で恐れられていたのだ。しかしあるとき、宿敵たるヴァンパイアからの依頼を受ける。最近起こったヴァンパイア連続殺人事件の犯人をつきとめてほしい、と。最初は断ったものの、ビロードの声を持つ美貌のマスター・ヴァンバイス、ジャン=クロードとの宿命的な絆に囚われてしまい、やむなく捜査にあたることになり…。妖しくミステリアスなサスペンス・シリーズ、ついに登場!

「咬む」という行為が性交のメタファーであるのは今さら言うことでもないし、既存のロマンスの身分(人種、年齢、etc)の差を置換えやすいので、パラロマではヴァンパイアジャンルはひじょうに多い。
今作も、そのうちの一つだろうなぁ、と思い込んでたんだけど、これがかなり面白い。


発表当時(93年)、パラロマというものがさほど認知されていなかったため、最初はファンタジーとして発売されたとか。そのためか、1巻のロマンス味は極めて薄い(続刊で濃くなるのかも知れないけど)。
毎度書いてるけど、パラロマのキモは設定如何にかかってる(と思う)。その点、このシリーズは世界観の説明が殆ど無い。しかし、これはつまらないということではなく、お約束の説明を省くという意味で、よりファンタジー小説に近い。
ヴァンパイアなど、アンデッドたちの法的問題など、作者は好きなんだなぁ、と好感が持てる。
アーバンファンタジーを舞台とした、女探偵ものという様相。


主人公のアニタが魅力的で、その造形だけでシリーズものとしての勝ちを握ったようなもの。華奢な女性ながら、タフで減らず口を叩き、陰惨な現場に駆けつけるも、恐怖や吐き気がなくなってしまうほど冷徹にもなっていない。また、ひじょうにガーリッシュな趣味を持っていて、それもロマンス小説っぽくないんだよね。
ヴァンパイアハンターという副業を持っていながら、マスターヴァンパイアと抗いがたい絆に結ばれてしまう点がパラロマなんだけど、彼女の本業である蘇生師がユニーク。それは、死者を蘇らせて遺言を確認したり、または拷問のような使い方をする悪の蘇生師も存在したり。これだけでも、探偵物語らしくいくつでも事件にかかわれる。
印象的な脇役も多く、死神と呼ばれるヴァンパイアハンターエドワードがお気に入り。個人的には『ニキータ*1の掃除人ビクトルのヴィジュアルに補完。


物語は、異世界ならではの犯罪で、また、読者にとって初対面である蘇生師の説明にもなっていて、ファンタジーミステリとして、よく出来ていると思う。
目を見ただけで魅了されてしまうヴァンパイアと、それに抗する力を得たアニタ、という展開がかろうじてロマンス成分なんだけど、その他の部分にロマンス小説の印象はない。


最強(最高齢)のヴァンパイアが、10歳にも満たない少女の姿をとってるって最近よく目にするけど、原型はどこ? 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア*2あたり? さらに遡れるの?
また、なんか変だと思ったら、上記したように93年発表なので、携帯電話が出てきません。まだまだ続くシリーズで、電話がどうなるのか楽しみ。ない世界とか?


これは、続編も読みますよ。