FLAMINGOES IN ORBIT

恍惚のフラミンゴ (Hayakawa Novels)

恍惚のフラミンゴ (Hayakawa Novels)

『恍惚のフラミンゴ』フィリップ・リドリー 〈早川書房
ミスマガの「奇妙な味が楽しめる短編集」で挙げられていたので着手。

収録作品
・「恍惚のフラミンゴ」Flamingoes in Orbit
・「大風は、蝶の羽ばたきによって」 The Turbulence of Butterfly Wings
・「ヴェルディに抱かれて」 Embracing Verdi
・「針」 Pins
・「信念の塔」 Towers of Belief
・「われわれの覚えていたいもの」 What We Care to Remember
・「ヒヤシンスが恐い」 The Fear of Hyacinths
・「七センチの靴」 A Shoe Three Inches Big
・「リヴァイアサン」 Leviathan
・「そばにいてくれる人」 What’s Here
・「がらがら蛇」 Rattlesnake
・「進め!」 Go
・「野蛮なる連続性」The Barbaric Continuity

人生における残酷さ、狡さ、皮肉が描かれた短篇集。ゲイをテーマにした作品も多い。
お気に入りは、
・「恍惚のフラミンゴ」
 父親が女と出て行き、母と二人暮らしになったカラドッグ。
 母は収入源として、下宿人を募集する。
 親友のロイドはベトナム戦争の残酷な写真をコレクションしている。
 カラドッグは、下宿人の部屋で見つけた、ポルノ雑誌をロイドに見せると……
 「まとも」な側にいるはずのダメ人間と、「異常」なはずの真人間。
 大義名分の元に行われるマッチョな残酷さと、偏見の目に曝されながらも平穏を求めるマイノリティとの皮肉な対比。
 滑稽でいながら、残酷で悲しい短篇。
 これが一番好きかな。


・「ヴェルディに抱かれて」
 父を亡くしたばかりのクラウド
 ある日、下校中にヴェルディという美青年に話しかけられる。どうやら父の知り合いらしい。
 そんな彼と知り合いになれて、学校でも注目の的。
 そのうち、クラウドは彼に同性愛的な感情を抱くが……


・「針」
 作家デビューした主人公。
 実家で食事をしていて、母から訊かれたことは?
 「気にしてない」という言葉がこれほど上滑りし、本当はもの凄く「気にしている」のが現れているショートショート


・「七センチの靴」
 離婚し、妻とその恋人の元で週末を過ごした息子を迎えに行く父親。
 毎度、そのたびに機嫌が悪いのだが、帰り道、死にかけたキジを見つけ……
 大人の理不尽さ、狡さがよく出ていいるなぁ。


・「がらがら蛇」
 娘を癌で亡くした写真家の男。
 精神的に参った妻は霊能者に相談に行った。
 彼もそこに行くが、その理由は妻とは違って……
 ダメな人が多い短篇集だけど、この主人公が一番ダメかなぁ(笑)


・「野蛮なる連続性」
 性格もよく、何をやってもうまくいく天文学者の兄と、完全におちこぼれの弟。
 実は兄はゲイなのだが、ある日彼から聞かされた秘密は……
 怪獣の骨を掘り出す際の、息子の視点も、母親の視点も理解できるな〜
 これはラストに希望がもてるのか?