THE SMOKING ROOM and Other Stories : A Collection

なんでもない一日 (シャーリイ・ジャクスン短編集) (創元推理文庫)

なんでもない一日 (シャーリイ・ジャクスン短編集) (創元推理文庫)

『なんでもない一日』シャーリイ・ジャクスン〈創元推理文庫F〉

家に出没するネズミを退治するため、罠を買うようにと妻に命じた夫が目にする光景とは……ぞっとする終幕が待ち受ける「ネズミ」。謎の追跡者から逃れようと都市を彷徨う女の姿を描く、美しい悪夢の結晶のごとき一編「逢瀬」。犯罪実話風の発端から、思わぬ方向へと話がねじれる「行方不明の少女」など、悪意と妄念、恐怖と哄笑が彩る23編にエッセイ5編を付す。本邦初訳作多数。


「序文 思い出せること」
「スミス夫人の蜜月(バージョン1)」
「スミス夫人の蜜月(バージョン2)――新妻殺害のミステリー」
「よき妻」
「ネズミ」
「逢瀬」
「お決まりの話題」
「なんでもない日にピーナツを持って」
「悪の可能性」
「行方不明の少女」
「偉大な声も静まりぬ」
「夏の日の午後」
「おつらいときには」
「アンダースン夫人」
「城の主(あるじ)」
「店からのサービス」
「貧しいおばあさん」
メルヴィル夫人の買い物」
「レディとの旅」
「『はい』と一言」
「家」
喫煙室
「インディアンはテントで暮らす」
「うちのおばあちゃんと猫たち」
「男の子たちのパーティ」
「不良少年」
「車のせいかも」
「S・B・フェアチャイルドの思い出」
カブスカウトのデンで一人きり」
「エピローグ 名声」

「チャールズ」という短篇がある。
これは『くじ』*1と『野蛮人との生活』*2に収録されてるんだけど、内容に異動があるわけでもないのに、両短編集での読み口は真逆と言っていいほど、印象が違う。


異色作家短篇集的な悪意や恐怖と、エッセイに現れるコミカルな部分は表裏一体、というより、シャーリー・ジャクスンの目は、同じように観察していた証左だと思う。


シャーリー・ジャクスンの描く「悪意」がひじょうに強烈なのは、キャラクターのそれが理解できちゃうからなんだよね。
自己の正当化、善意の押し付け、責任逃れ、哀れみという名の差別……
この誰もが身に覚えがあるけど正視したくない暗部を、ジャクスンの筆は、くっきりとあからさまなまでに照らしだしてしまう。
コミカルな子育てものも、誰もが覚えがあるような、子どもならではの当然の(だと思ってる)権利を振りかざす様子は、上記の暗部と同じで、照射されるライトの位置が違うだけ。
シャーリー・ジャクソンの作品は、超自然的な存在を扱ったものもあるけど、必ず、このライトが使われている。


お気に入りは、「ネズミ」「なんでもない日にピーナツを持って」「悪の可能性」「行方不明の少女」「アンダースン夫人」「レディとの旅」「インディアンはテントで暮らす」「カブスカウトのデンで一人きり」


子育てエッセイは面白かったんで『野蛮人との生活』と『悪魔は育ち盛り』は出してほしいなぁ。