CRASH

『クラッシュ』J・G・バラード〈創元SF文庫629−12〉
ペヨトル版を持っているかと思っていたら、どうやら本棚にはない様子なので新刊買い。どっちにしろ、未読だったし。

自動車をスリップさせ、正面衝突を起こし、相手を死なせてしまったバラード。そのときから、彼は交通事故とセックスの結びつきに囚われる。そんな彼の前に現れた謎の男ヴォーン。彼こそは、暴力とエクスタシーを同一と考え、エリサベス・テイラーと衝突死する妄想に取り憑かれた男だった。バラードはそんなヴォーンに徐々に心酔していく……

ページ数は少なめなんだけど、読むのに時間がかかった。
正直、内容がちゃんと飲み込めたかというと、まるで自信がない。しかし、全体像ではなく、自動車、事故、セックスのディティールを積み上げていくと、そこには精液とビニールシートの臭いが充満したモンスターが現れる。
セックスと交通事故を生々しく並べて描写しながら、見えてくるのは無機質でメカニカルなシステム。
そのパワーは圧倒的で、書かれてから30年以上経っているのに全く衰えていない。むしろ現代の小説のよう。
見たばかりだから、ヴォーンが、『ノー・カントリー』のシガーとダブった。