A DIRGE FOR CLOWNTOWN and Other Stories

道化の町 (KAWADE MYSTERY)

道化の町 (KAWADE MYSTERY)

『道化の町』ジェイムズ・パウエル河出書房新社 KAWADE MYSTERY〉
パウエルの日本初の短篇集。

 収録作品
・「最近のニュース」Have You Heard the Latest?
・「ミスター・ニュージェントへの遺産」A Bequest for Mr. Nugent
・「プードルの暗号」The Code of the Poodles
・「オランウータンの王」The King of the Orangutans
・「詩人とロバ」The Talking Donkey
・「魔法の国の盗人」The Theft of the Fabulous Hen
・「時間の鍵穴」A Keyhole in Time
・「アルトドルフ症候群」The Altdorf Syndrome
・「死の不寝番」The Vigil of Death
・「愚か者のバス」The Dunderhead Bus
・「折り紙のへラジカ」The Origami Moose
・「道化の町」A Dirge for Clowntown

ネタ自体はクライム、パズルものなんだけど、語り手や当事者たちが奇妙なものばかり。

また、その設定ならではの犯罪というのもいい。
半分はイマイチ趣味じゃなかったんだけど、もう半分はなかなか好みだったので、個人的にはアタリの短篇集。


お気に入りは、
・「最近のニュース」
 いつも突飛な妄想を口にする妻。
 精神科に通院することになり、改善されたように見えたが、
 その医者がスパイだと言い始め……
 陰謀論好きとしては、たまらん作品。
 ラストシーンもいいなぁ。


・「ミスター・ニュージェントへの遺産」
 資産家の老婦人の元へ、いつも様子を見に来てくれる若者。
 感じのいい男なのだが、理由がよくわからない。
 老婦人も遺産は親戚に残すと言っても彼はやってくる。
 はたして、彼の目的は?
 ラストでニヤリと、そして清々しさを感じる作品。
 題名も効いてます。


・「プードルの暗号」
 伯母の遺産が全てプードルと、その後見人のお手伝いに行くと知った男。
 それを無効にさせようとするが、そのプードルが暗号で話しかけてきた!
 その内容とは? 
 これはホラーだよなぁ。なんか大昔に見たホラーのラストシーンが頭をよぎる。


・「オランウータンの王」
 スランプの絵本作家。
 隣人に挨拶に行くが、何やら厳重に見張られている。
 そこで、ふと懐かしい臭いが……
 

・「魔法の国の盗人」
 竜が扉を守るガラスの塔から金の卵を産む雌鳥が盗まれた。
 いったいどうやって?
 ちょっとダーシー卿チックなんだけど、作者はラストの意地悪が書きたかっただけでは?(笑)


・「時間の鍵穴」
 男の元を訪れた二人組。彼らは未来人らしい。
 未来の平和のため、彼に従兄弟を殺して欲しいという。
 そうすれば、未来で英雄として称えると約束する。
 言われたとおりにし、その結果を見に行くと……
 解説のたとえは、微妙に古いよ……


・「道化の町」
 道化だけが暮らすクラウンタウン。
 そこで殺人事件が。
 被害者は毒入りパイを顔に投げつけられて殺されていた。
 はたして犯人は?
 道化師である意味は全く不明なんだけど、それでもしっかりとそれに沿った展開が最高。
 発砲シーンが泣ける。
 

特に好きなのは、「最近のニュース」「ミスター・ニュージェントへの遺産」「道化の町」あたりかな。
SFミステリ、異世界ミステリ、変なミステリとクロスジャンルものが好きな人にはオススメ。