THE SUMMER ISLES and other stories

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『夏の涯ての島』イアン・R・マクラウド早川書房プラチナ・ファンタジイ〉
日本オリジナル短篇集。


・「帰還」Returning 
違う世界へと旅立つため、ブラックホールに入っていく宇宙飛行士たち。
しかし、彼らは何度も地球に帰ってきてしまうのだった……
このラスト、どういう解釈? これは他の人と意見交換したいなぁ。
並行世界なんだろうけど……


・「わが家のサッカーボール」The Family Football  
変身能力のある世界。
ある日、お母さんがナマケモノに変身したまま戻らなくなってしまった。
その原因は?
何度か読んでるけど、やはり面白いなぁ。
笑い、ぎょっとし、しんみりする。
異様な世界なのに、しっかり家族の愛を描いている。


・「チョップ・ガール」The Chop Girl  
二次大戦中のイギリス。
爆撃機の基地に勤める女性。彼女とデートした男は帰還できず、不吉な女だと避けられていた。
ある日、絶対に死なない、幸運の爆撃機乗りがやってきて……


・「ドレイクの方程式に新しい光を」New Light on the Drake Equationカプセル一つで人体改造が出来るようになった未来。
誰も宇宙に興味がなくなった中、一人SETIの探査を続ける学者。
そこに昔の恋人が訪れる。
SETIを介して、人類と一人の男の孤独を描いた短篇。
このラストも、いろいろ考える。
人間はけっして孤独ではない、ということなのかなぁ。


・「夏の涯ての島」The Summer Isles一次大戦でドイツに負け、ファシズムユダヤ人と同性愛者への迫害を進めるイギリス。
癌に冒された歴史学者グリフは、カリスマ的指導者ジョン・アーサーの元教師として、その恩恵を受けていた。
しかし、アーサーは、若き日の彼が愛した男だったのだ……
パヴァーヌ』と似た読後感。
歴史学者故に歴史を修正しようとするも、やはり学者で、実際の流れが見えていない。
歴史はフレキシブルで、何かを省き入れ替えても、結局同じような道を辿るようになる様が、なんとも


・「転落のイザベル」Isabel of the Fall
遠未来の異星。
常夏の惑星に、どのようにして四季が生まれたのか?


・「息吹き苔」Breathmoss
女性ばかりの惑星。
山から母親たちとともに海辺の町に引っ越してきた少女。
そこで彼女は初恋と様々な成長を遂げていく。
「転落のイザベル」と同じ宇宙史に属する作品。


全体的に、SFガジェットを使ったファンタジーという趣。
また、他に理解者がいない孤独、を描いた作品が多い。スタージョンの孤独とは、また湿度と温度が違うんだよね。
雰囲気に酔うもよし、深読みするもよし。
長篇も訳して欲しい作家。