2008年11月号

S-Fマガジン 2008年 11月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2008年 11月号 [雑誌]

今月は、「宇宙SFの現在」


翻訳は5本。
・「グローリー」……グレッグ・イーガン
 恒星間航行によって現れた二人の異星人。
 その星には、今の人類以前に栄えていた種族がおり、
 彼らが滅びるまでに研究していた数学を調べに来たというのだが……
 イーガンにしては理解しやすかったです(笑)
 争いよりは平和の方がエネルギー効率がいい、というのは作者のストレートなメッセージとして受け取っていいのかしら?
 いろいろと苦いものを感じる。
 冒頭の恒星間航行の描写がカッコイイ。


・「ヴェルザンディの環」……イアン・マクドナルド
 様々な星が一つの共同体となったクレイド
 そこに、強大な謎の敵が現れる。
 “ヴェルザンディの環”を巡る激しい戦争が起きるが、その正体は?
 千年紀単位で、遠大な時間も空間も一瞬にして過ぎていく様に圧倒されているうちに終わってしまった。


・「ウルフ359なんて怖くない」……ケン・マクラウド
 有力者の夫人を寝取った罪で、釈放と引き替えに通信の途絶えた惑星に向かうことになった男。
 そこは、禁忌となった第三惑星の政治形体を目指していて……
 ラストがよくわからず何度も読み返してしまった。
 普通に、征服型政治でいいのか?
 主人公の語りとか、過去とか、記憶とか意味ありげなんだけど……


・「戦争と芸術」……ナンシー・クレス
 地球と戦争を続けているテル人。
 テル人が地球から略奪した物品を保管した倉庫の調査に向かった大尉。
 しかし、そこにあるのは超1級の美術品から、単なるガラクタまで。
 はたして、その意味は?
 親子の反目と異星の理解、芸術への理解が対になっていて、わかり合おうとしないことに対する哀れみ。
 また将軍の大勝の秘密など、ラストまで読ませてくれました。


全体的に、理解と闘争、また単一政体の行き詰まり、と読める作品が多い。


・「食物の招喚」……リン・ディン
 単行本を買ったので、もったいないから未読。


「大森望のSF観光局」に、マイミクのスターライトさんの名前が!


「デッド・フューチャーReMix」は、ステュアート・ブランド。
ヒッピー文化の教祖がどのようにして宇宙植民と関わってくるのか?


「SF挿絵画家の系譜」は、坂入徳次郎


「サはサイエンスのサ」は、お休み


「センス・オブ・リアリティ」は、
金子隆一は、大量絶滅。ワンの絨毯だったら面白いなぁ
香山リカは、首相の自己管理。


「乱視読者のSF短篇講義」は「アジアの岸辺」


「MAGAZINE REVIEW」は〈アナログ〉誌
"Guaranteed Not to Turn Pink in the Can"トーマス・R・ダルスキ
"Test Signals"デイヴィッド・バーテル
"Consequences of the Mutiny"ロナルド・R・ランバート
"Finalizing History"リチャード・K・ライオン
"Tenbrook of Mars"ディーン・マクローリン
が面白そう。


来月は秋のファンタジイ小特集。