THE SEPARATION

双生児 上 (ハヤカワ文庫FT)

双生児(下) (ハヤカワ文庫FT)

『双生児』クリストファー・プリースト〈早川書房プラチナ・ファンタジイ〉読了

第二次世界大戦中、英空軍爆撃機のパイロットとして活躍したJ・L・ソウヤー。しかし、彼は同時に良心的兵役拒否者でもあったらしい。そんなことが可能なのか？　興味を持った歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、父が爆撃機操縦士だったという女性が、彼が書いていた回顧録を持ち込む。彼の名はJ・L・ソウヤー。グラットンの追うソウヤーなのだろうか？　二人のJ・L・ソウヤーの歴史が始まる……

口を開くとネタバレしちゃいそうだな。
基本的には、二人のソウヤーの日記で構成されていて、その合間に他の人々の手紙や公文書が挟まれるという体裁。
しかし、この日記、いつものように信用できない語り手のため、時間や記憶が行ったり来たり。
それでも、前半は普通の戦記なんだけど、爆撃手ソウヤーの語りが終わるあたりから、矛盾が生じ始める。
いや、そもそも、最初から「あれ？」という描写はあるわけで、それを忘れた頃に再び「あれ？」。で、どんどん「あれ？」が積み重なって、最後に「おおっ!?」。（擬音だけで頭の悪い感想だな……）
正直言うと、解説読んで、子供の名前に気づいたダメな読者なんだけど。
でも、ラストから遡って考えていくと、どちらが先で後で、箱の中身と外がでんぐり返るような、親殺しのパラドックス的な目眩を覚える。
個人的には『奇術師』の方が好きだけど、こちらも、読書の凄さを味わうことができる、オススメ作品。


それにしても、プラチナ・ファンタジイは装丁そろえて欲しかったなぁ。