自転車少年記―あの風の中へ

自転車少年記―あの風の中へ (新潮文庫)

自転車少年記―あの風の中へ (新潮文庫)

自転車少年記―あの風の中へ』竹内真新潮文庫〉読了
日本人の小説を新刊で買うなんて、何年ぶりだ?
今年読んだ小説の中でベストの1冊『自転車少年記』(発行は2004年)の文庫版。
とは言っても、ただの文庫落ちではなく、主人公の一人、昇平の視点からの回想になっており、単行本が4歳から始まったのに対して、文庫は専門学校に受かり、自転車で上京するシーンから始まる。


正直、あのフラッシュバックするような少年時代が全て昇平の回想だけで語られてしまっていて、最初はイマイチだったんだけど、八海ランが始まる辺りから、かなりはまりました。実際、この自転車イベントが文庫版の軸になっていて、単行本とは違うラストに効いてくる。そう、文庫版には、その後が描かれているのだ。
単行本は昇平と草太の二人の物語だったけど、文庫は昇平の人生の物語。そして彼から、新たな「自転車少年記」が受け継がれる。


単行本が複数の登場人物の年代と視点で描かれていたから、文庫版はその編年体が薄まってしまったのが、個人的には残念。自転車そのものに対する魅力やパワーの描写がちょっと削がれちゃってるかな。
それでも、自転車があるからこそできることや人生は、大人になった昇平や、その息子の北斗を中心に据えることによって、かなり実感を伴っている気がする。単行本はかなりノスタルジーが強いので。
人に勧めるなら、やはり単行本版。それとも、読みやすい文庫から入って、さらに書き込まれた単行本の方がいいのかな? とにかく、単行本読んだ人間は文庫版も手にとって損はないでしょう


これが書かれたのなら、是非、伸男版のスピンオフも読みたいなぁ。
文庫だと彼は本当にちょい役なのが、一番残念なこと。


ジャニーズでドラマ化されるそうだけど、イメージ違うよ。特に昇平……